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CROSS-12 死を呼ぶウィジャ盤

遊戯王 20 (集英社文庫―コミック版) (集英社文庫 た 67-20)遊戯王 20 (集英社文庫―コミック版) (集英社文庫 た 67-20)
(2008/02/15)
高橋 和希

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 懐かしいセリフ、禁止!

 普段なら、入院患者が寛いでいるだろう。緑が安らぎをもたらしてくれる中庭は、瘴気により包囲されていた。毒霧のように漂っており、日光をさえぎっている。おかげで、丸時計は午後2時を示しているのに、あたりは夕方かと見紛うほどに暗くなっている。息を吸いこむたびに、悪寒が肺から広がっていく。目の前に立ちはだかるバクラを、一刻も早く倒さなければ。それにしても……この人、何かで目にしたことがある。いったい、どこで……?

「私の先攻、ドロー。モンスター1体を裏側守備表示でセット。カードを2枚セットして、ターンエンド」



【2ターン目:バクラ】LP4000、ドローフェイズ後の手札6枚

(フィールド)
アキ:モンスター1体を裏側守備表示でセットしている。魔法&罠カードゾーンにカードを2枚セットしている。


「貴様に教えてやる。オカルトデッキの恐怖をな! 俺様のターン、ドロー。儀式魔法《高等儀式術》を発動。デッキから通常モンスター《夢魔の亡霊:Lv4》と《絵画に潜む者:Lv4》を墓地に送り、《闇の支配者ーゾーク:攻撃力2700・Lv8》を儀式召喚!」

 紅翼を広げ、魔神が巨体を持ちあげた。筋肉に膨れあがった、褐色裸体の上半身。背中まで伸びきった緑髪。仮面からは、憎悪のつまった双眸が覗いている。そいつが、ニヤリと口を歪ませた。まるで、プレイヤーの分身だ。バクラがコートからサイコロを握りあげた。

「《闇の支配者ーゾーク》のモンスター効果を発動。貴様の運命も、このダイズで決まる」

 叩きつけられるように投げられ、独楽のように回転していく。勢いも収まっていき、立方体は静かに横たわる。空に向いているのは、【3】の目だ。ファンブルによる自爆も、期待はしていなかった。くはっと大息を吐きだして、ぎらついた双眸を開き、バクラが叫びだす。

「《闇の支配者ーゾーク》の効果により、相手モンスター1体を破壊する。ダーク・カタストロフィー!」

 ゾークの両腕から繰りだされた闇雷撃。響きをあげる轟音。伏せていた《ダンディライオン》が撃たれて、消炭にされた。破壊されても、このモンスターには特殊効果がある。《綿毛トークン:守備力0・Lv2》2体が、守備表示で特殊召喚されるのだ。コミカルな綿毛が並びたつ。

「雑魚が湧いたのなら、《闇の支配者ーゾーク》で攻撃するまでだ。魔手刀閃!」

 大きな右腕を振りあげ、ゾークが吼えた。紅翼を広げて、滑空突進。対策は仕掛けてある。

「罠カード《棘の壁》を発動するわ。植物族モンスターが攻撃対象になったとき、相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する」

 起きあがったトラップ・カードから、無数もの棘が伸びていく。両肩に腹部、右脚。《闇の支配者ーゾーク》の全身を貫いていく。苦悶の呻きをあげ、ガラスが割れるごとくに消滅した。

「まあ、いい。墓地の悪魔族モンスター3体を除外して、手札から《ダーク・ネクロフィア:守備力2800・Lv8》を守備表示で特殊召喚する。カード1枚をセットして、ターンエンドだ」

 次に現れたのは、女性型のマリオネット。《闇の支配者ーゾーク》ほどのパワフルさはないが、不気味な雰囲気が漂っている。壊れた人形を赤ん坊のように抱いている。鷹のような双眸を刺しながら、バクラの口元が笑んでいた。墓地に悪魔族モンスターを送るための《闇の支配者ーゾーク》だろうか。《ダーク・ネクロフィア》こそが本命なのかもしれない。



【3ターン目:アキ】LP4000、ドローフェイズ後の手札4枚

(フィールド)
アキ:《綿毛トークン:守備力0・Lv2》2体が守備表示。魔法&罠カードゾーンにカードを1枚セットしている。

バクラ:《ダーク・ネクロフィア:守備力2800・Lv8》が守備表示。魔法&罠カードゾーンにカードを1枚セットしている。


「私のターン、ドロー。《夜薔薇の騎士:攻撃力1000・Lv3・チューナー》を召喚。このカードの召喚により、手札から《ロード・ポイズン:攻撃力1500・Lv4・植物族》を特殊召喚する」

「レベル4《ロード・ポイズン》に、レベル3《夜薔薇の騎士》をチューニング!」

「冷たい炎が、世界の全てを包みこむ。漆黒の花よ、開け! シンクロ召喚! 現れよ、《ブラック・ローズ・ドラゴン:攻撃力2400・Lv7》!」

 紅薔薇が翼を広げた。その中央から、竜首が大きく吼えあがる。花弁が舞いあがった。

「《ブラック・ローズ・ドラゴン》のモンスター効果を発動するわ。墓地から《ダンディ・ライオン:植物族》1体を除外して、《ダーク・ネクロフィア》を攻撃表示に変更し、エンドフェイズ時までその攻撃力を0にする。そして、《ブラック・ローズ・ドラゴン》で攻撃する。ブラック・ローズ・フレア!」

 《ブラック・ローズ・ドラゴン》が吐きだしたブレスを受け、《ダーク・ネクロフィア》は粉々に粉砕された。その身は棘により痛めつけられ、攻撃力も0に落ちている。実質的にダイレクト・アタックと変わらない。バクラのライフが、1600ポイントにまで削られていく。《ダーク・ネクロフィア》は消えゆくものの、壊れたベビードールだけが、宙に浮いたまま残っている。バクラが叫びだした。

「《ダーク・ネクロフィア》が破壊されたエンドフェイズ。相手モンスター1体の装備カード扱いとして強制装備し、装備モンスターのコントロールを得る。予想以上のダメージを負ってしまったが、俺様が描いたとおりの展開だ。《ブラック・ローズ・ドラゴン》、ゲットだぜっ!」

 赤ん坊人形が溶けだして、死霊と化した。《ブラック・ローズ・ドラゴン》に憑こうとしてだろうか。狂いきった笑顔を浮かべながら、宙を泳いでいく。だけど、対策は練っていある。

「カウンター罠《紅薔薇のカーテン》を発動。《ブラック・ローズ・ドラゴン》を対象にするカード効果を無効にする。《ダーク・ネクロフィア》は憑けないっ!」

 紅薔薇が渦巻いて、壁をなしていく。怨霊は阻まれて、削られるように消滅した。くっくっくっ。バクラが上半身を曲げて、哂いを湛えている。まさか、この展開も狙いどおりなのか。どろりとした唾を飲みこんだ。冷汗が額を流れおちていく。悪鬼のような眼差しで、睨みあげてくる。

「《ダーク・ネクロフィア》を倒してくれて、ありがとうよ。シグナー。貴様は今、世にも恐ろしいオカルトコンボのスイッチを押しちまったのさ!」

 大きな哄笑へと拡大していく。バクラ自体が、怨念の固まりそのものだ。

「永続罠《ウイジャ盤》発動。教えてやるよ。ウィジャ盤とはな、霊魂との交信するための道具だ。 怨念によって、アルファベットの書かれた盤上を動いて、文字を指していく。最初は【D】。そして、貴様のエンドフェイズ毎に、E・A・T・Hの文字が、ひとつずつ浮かびあがる。次は【E】だ」

 バクラの背後に顕現していく、巨大なウイジャ盤。腐汁を垂らしながら、屍人の手首が移動していき、死へのカウントダウンを示していく。

「そうだ。 死の宣告! DEATHの5文字が揃えば、ライフポイントが残っていようとも、その瞬間に貴様は抹殺されるんだ!」



【4ターン目:バクラ】LP1600、ドローフェイズ後の手札3枚

(フィールド)
アキ:《ブラック・ローズ・ドラゴン:攻撃力2400・Lv7》が攻撃表示。《綿毛トークン:守備力0・Lv2》2体が守備表示。

バクラ:永続罠《ウイジャ盤》&永続魔法《死のメッセージ「E」》発動中。


「俺様のターン、ドロー。フィールド魔法《ダーク・サンクチュアリ》を発動。こいつは《ダーク・ネクロフィア》が墓地に存在しないと破壊されてしまうカードでな。ここからが、オカルトコンボの本領発揮だぜ! こいつは闇のデュエルだ。たっぷりと、苦痛と恐怖を味わうがいい」

 地面から闇が湧きあがっていき、視界一面が暗闇に覆われた。中庭全体が暗黒に包みこまれている。生々しく濁りきった眼球が、次々と宙に開いていく。圧迫してくる死者の視線。それだけではなかった。大口が腐臭を吹きだして、唾液をぼたりと落としている。唇も薄緑へと変色しているようだ。口内からは、目玉の群れが……ぎょろぎょろと蠢きあっている。私たちを喰らおうとしているのか。これが、闇の聖域。振りかえると、アルマが不安げな表情を震わしている。

「大丈夫だよ。アルマさん。これぐらいの状況なら、打ち破れるから」

「それはどうかな? あの武藤遊戯すらも追いつめたフィールドだ。貴様ごときに、抜けだせるわけがない。《人骨鬼:攻撃力1200・Lv4》を攻撃表示で召喚。このカードが場にある限り、《ウイジャ盤》と《死のメッセージ》は破壊されない。カード1枚をセットして、ターンエンド」

 ごつごつとした甲羅上で、何かが蠢いている。無数の亡霊が張りついて、苦しげな呻きを蒸散させている。何という、おぞましい巨亀だろうか。今のセリフに、違和感が過ぎった。武藤遊戯……。伝説の決闘王と戦ったことがあるの? どういうことだろうか。



【5ターン目:アキ】LP4000、ドローフェイズ後の手札3枚

(フィールド)
アキ:《ブラック・ローズ・ドラゴン:攻撃力2400・Lv7》が攻撃表示。《綿毛トークン:守備力0・Lv2》2体が守備表示。

バクラ:《人骨鬼:攻撃力1200・Lv4》が攻撃表示。フィールド魔法《ダーク・サンクチュアリ》&永続罠《ウイジャ盤》&永続魔法《死のメッセージ「E」》発動中。魔法&罠カードゾーンにカードを1枚セットしている。


「私のターン、ドロー……」

 《ダーク・サンクチュアリ》について調べたものの、ディスク画面に表示されない。どうなっているんだろう? 伏せカードも気になる。そんな私に、嘲笑するような声が投げられた。

「攻撃に躊躇してそうな顔だな。いいぜ。俺様は優しいんだ。迷いを吹っきらせてやるよ。罠カード《バトルマニア》を発動。相手モンスターは、必ず攻撃をしなければならない」

 《ブラック・ローズ・ドラゴン》が《バトルマニア》に挑発されて、大きく息を吸いこんだ。スカーレット・ブレスを吹きつけようとするも……その巨体が、ぴたりと動きを止める。紅薔薇を思わせる背中から、死霊が飛びだした。私に向かって噛みついてくる。バクラが哄笑が駆けあがっていく。

「驚いたようだなぁ。 そいつはよ。《ダーク・サンクチュアリ》の効果で実体化した怨霊さ。憑依を受けたモンスターの攻撃は、無効とされる。その攻撃力の半分1200ポイントを、貴様がダメージとして受ける。削られた貴様のライフを俺様が吸収し、ライフポイントを回復」


『スピリット・バーン!』


 悪霊が胸中へと潜りこんできた。受けたダメージが本物になる、闇のデュエルなんだ。牙で内蔵をぐちゃぐちゃにされているようだ。激痛が、私に苦痛を露わにさせる。両手で腹部を押さえながら、膝をついてしまった。涙がぼたぼたと零れてくる。1200ポイントものダメージを受け、私の残りライフは2800ポイント。対して、バクラは2800ポイントにまで回復した。

「これだけじゃねーぜ! 守備表示の《綿毛トークン》も《バトルマニア》の効果を受け、攻撃表示になっている。《人骨鬼》に攻撃してもらうぜ。壁モンスターを張ったつもりが、逆に仇になったようだな!」

 《綿毛トークン:攻撃力0》が猛進していく。《人骨鬼》が大口を開けて、迎えうつ。口奥から、熱線を撃ちだした。《綿毛トークン》は無残にも、燃やされつくしてしまう。合計2400ポイントもの戦闘ダメージに蝕まれてしまい、残りライフは400ポイントにまで落ちていった。

「ア、アキさん! 大丈夫なのですか!?」

「心配しないで。私は負けないから……」

 心身共に穿たれたような気分だ。視界すらもが揺らいできた。油断していると、膝が折れそうになってしまう。いや、一瞬だけだが意識が白くなっていた。泣きはらしながら、アルマさんが心配してくれている。彼女を安堵させたいけれど、難しいようだ。

「まるで、虫の息だな! 貴様のエンドフェイズだ。死のメッセージは【A】を指し示す」

 悪魔が笑うと、こんな相貌になるのだろうか。バクラは勝利を確信しているようだ。その背後には、ウィジャ盤がそびえている。屍人の腕が、腐液を垂れながしながら、死のカウントダウンを進めていく。残り2文字で、私は敗北してしまう。頭の底から、ちくりと記憶が疼いてきた。そういえば、資料で観たことがある。バトルシティの決勝トーナメント。武藤遊戯と対戦したオカルト使い。

「伝説のデュエリスト。獏良 了……」





【エピソード2-バクラの罠・その3】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

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