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CROSS-G WDGP前日 恐怖のデッキ破壊!

BRAVING!(アニメ盤)BRAVING!(アニメ盤)
(2011/12/14)
KANAN

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 某事件を追いかけたせいか、時間がかかってしまいました。

 深夜の森には、かすかな光もなかった。木々に遮られた夜空には、月すらも浮かんでいない。そんな闇中を逃げまわるのは、至難の業であろう。木の枝が張りだして、簡単に転んでしまいそうだ。尖った石により、足を切ってしまいそうだ。私を抱きかかえながらも、ダルクくんは懸命に駆けている。人間でないためか、暗黒が充満している深森を、くっきりと視認できるそうだ。湿った緑香が、鼻腔をくすぐってくる。出会ってから4年が経過した。ダルクくんは頼りになる親友だ。真剣な表情を固めながら、私のことを助けようとしてくれる。背後から爆音が轟いた。

『テケリ、リ! テケリ、リ!』

 ショゴスが木々を倒しながらも、列車のような勢いで突進してくる。不定形な肉体を、膨張させたり収縮させながら、異様な速度で這わせてくる。数億年前の太古でも、遠くから目にしたことがある。旧支配者ウボ・サスラの体組織をベースにして、古のものにより製造された生命体。自在に体器官を造りだせるようだ。全身のいたるところから、目口を湧きださせている。複数の口からは、独特の鳴声が輪唱している。名状しがたき異臭が漂ってきた。

 1930年。ミスカトニック大学の探検隊が、南極調査を敢行した。そこで発見したのは、狂気山脈。古のものたちが築いた古代都市の跡地である。ウィリアム・ダイアー教授は、遺跡の深奥部でショゴスに遭遇してしまった。逃亡劇のすえに、命からがらに生残った。警告のための手記を遺したようだ。それ以降も、狂気山脈への学術探査は続けられた。つい最近のことだろうか。ショゴスを捕獲してアーカムへと運ぼうとしたところ、逃げられたようだ。そいつが私たちが住んでいる森にまで迷いこんできた。私たちを喰らおうとして、執拗に追跡してくる。

「ごめんね、アウス。地面に降りてもらってもいいかな? このままだと逃げられないし、森の動物たちにも迷惑をかけちゃうよ。久々で上手くいくか分からないけど、アレをやるしかない」

 ぬかるんだ土面に足着けて、少しだけ下がった。ダルクくんが目をつぶって、精神集中。すると、いくつもの虹色球体が浮かびあがった。バスケットボールぐらいの大きさで、ぽわぽわと漂っている。暗黒森が七色に照らしだされていく不思議な光景。口端を邪悪に曲げて、ダルクくんはソレを放った。散弾銃のごとく、ショゴスに撃ちこまれていく。スライム状の肉体が弾けて、嫌な臭いが吹きこんできた。絶叫が重なったかと思えば、目口が次々と閉じていく。膨大な塑性肉体は、みるみると収縮していく。激しく悶えたすえに、ショゴスは動かなくなった。右手を胸に当てながら、ダルクくんが息荒くしている。ほんのりと紅潮しながら、かすかに震えている。

「困ったね。何かを壊すと、興奮が止まらない。本当にどうしようもないよ。自分の性癖は」

「……よく理解できないけど、あなたのおかげで助かったの。ありがとう」

 テレビ映画で観た、感謝表現を真似てみた。人間ではありえない、独特の柔らかさ。その身体を抱擁して、唇を重ねあわせた。いつも菓子ばかり食べているせいか、とっても甘い感触がしてくる。しばらく息を止めてから、ゆっくりと離れた。両目を点にしながら、ダルクくんが喚きだす。

「ア、アウス! 何てことをするの! ボクね。初めてなんだよ!」

「いっしょに映画を観たでしょ。宇宙怪人に襲われたヒロインが助けられて、逞しい主人公にキスをした。私も感謝の気持ちでいっぱいなんだ。ダルクくんは、私にとってヒーローだよ。だからね。私なりに、感謝のサインを送ってみたの」

 あまりのショックに、ダルクくんは両目をパチクリしている。破壊欲による悩みは、どこかへ飛んでいったようだ。ふぅと息を吐きだして、穏やかな笑顔を浮かべていく。ダルクくんの方から、そっと抱きついてきた。とても温かい。膨れだしている胸が私のに圧しつけられる。

「まぁ、いいか。アウスが助かってよかった。うん! それに、アウスならOKかな」



 ちょっとした白昼夢に浸っていた。たしか、14歳の夏頃だったと思う。ダルクくんは、迫ってくるショゴスから私を守りきってくれた。その事件が、きっかけだろうか。私たちの親密度は、ますます濃くなったように思う。ショゴスの方は回収され、今でも元気に暮らしている。あらゆる生物に変身できる性質を活かされて、人間としてミスカトニック大学でメイドをしているそうだ。

 4年前に戻っていた意識を、現在に戻そう。私とダルクくんは、木製テーブルに向かいあっている。お洒落なパスタ専門店で、落ちついたミュージックが心地よい。食欲をそそらせる香りが、優しい空調により広げられていく。目前では、ダルクくんがカルボナーラを食べている。パスタをフォークで巻きとり、ホワイトソースをすくったスプーンに乗せて、少しずつ口に運んでいる。ゆったりと味わっているため、私の方が早く食べおえてしまった。美味しそうに堪能している親友の笑顔が、よきデザートだ。仔猫のようにチョロチョロ食する姿は、周囲の視線を惹きこんでいる。

 ワールド・デュエル・グランプリ、省略してWDGPの前日。地底で煮えたぎるような活気が、シティにあふれだそうとしていた。ポリスが駆けまわり、職員さんたちが準備に勤しんでいる。多くのショップがカーニバルに便乗して、盛りあがりに加担している。この店もそうだ。スペシャル・サービスとして、ミニケーキがついてきた。それも完食しちゃったけどね。

 午前中は、ダルクくんと街見学。途中でディックという路上決闘者に再会したようで、2時間ほどのデュエルタイムに突入した。巻きこみたくないと、ダルクくんは人間関係を避けていた。でも、そうはいかなかったようだ。お兄さんたちとのゲームに、すっかり熱中していた。私も誘われたけど、雰囲気に慣れるので精一杯。ダルクくんが他人と楽しそうにしているだけで、とても嬉しい気持ちがこみあげてくる。恐眼のおかげで、引きこもり生活を余儀なくされていたのだから。

「ごちそうさまでした。うん! パスタもだけど、ケーキも美味しかったよ」

 いつの間にか、デザートがさっぱり消えていた。甘いものに関しては、食べきるのが早いものだ。ペーパーでダルク君の口元を拭くと、うぐぐっと声を漏らした。テーブルの上で、ハネクリボーが微笑ましくしている。撫でようとしたけど、手がすり抜けてしまった。

「ありがとう、アウス。待たせちゃったね。午後はどうする? ボクは、誰かと決闘したいけど」

「WDGPに出場するからには、練習あるのみだね」

 本来ならば、出場申込みの期限は過ぎていた。だけど、カーリーさんの裏コネで何とかなった。その代わり、独占取材を受けさせられたけど。このRPGでは、デュエル・モンスターズがキーとなる。大会で腕を磨いていくのが、最良の選択であろうか。実力者とも当たれるはずだ。遊星さんの連絡先を教えてもらったけど、ダルクくんは紅く戸惑っている感じがする。



「たしか、ダルク・ウェイトリィといったね? 雑誌に小さく写真が載っていた。俺の記憶力で、きっちりと覚えておいたからな。確実だぜ。デュエルの実力を伸ばしていると聞いている。興味が湧いてくるよ。おっと、自己紹介。俺はチーム・ユニコーンのブレオというんだ。よろしくな」

 金髪を伸ばして、アゴヒゲが目立つ。そんな若男性がサングラスを外しながら、話しかけてきた。聞覚えのある声をしている。同一人物かと勘違いするほどに、ナイ神父とそっくりな声。気づいたのだろうか、ダルクくんも困惑している。さっきからジロジロ眺めていた。何の用事なのだろう?

「俺はダルク。こちらは、セーラ・ピースリー。ニックネームはアウスだよ。よろしくね」

「もし、よければだけど……。俺とデュエルをしてくれないか? プロとしてもニューフェイスには興味津々なんだよ。今後の強敵になるかもしれないしな」

 周囲がざわつきだした。思いだした。ニュース番組に登場していた。数々の世界大会で優勝をかっさらい、WRGPではチーム5D’Sを追いつめたチーム・ユニコーン。そのメンバーだ。当然に、ダルクくんも覚えているはず。人差し指を口元に当てながら思慮している。嬉しそうに承諾した。

「プロデュエリスト。すごいっ! 戦ってくれるの。とても嬉しい。よ、よろしくお願いします」



『デュエル!』



【1ターン目:ブレオ】LP4000、ドローフェイズ後の手札6枚

 駅前広場にて、デュエルが始められた。ユニコーンの知名度により、集客効果が抜群なようだ。多くのギャラリーに囲まれているせいか、ダルクくんは緊張している。

「俺の先攻、ドロー。魔法カード《一時休戦》を発動。お互いのプレイヤーは1枚ドローする。次の自分ターンまで、俺は一切のダメージを受けなくなる。モンスター1体を裏側守備表示でセット。カード3枚をセットして、ターンエンドだ」



【2ターン目:ダルク】LP4000、ドローフェイズ後の手札6枚

(フィールド)
ブレオ:モンスター1体を裏側守備表示でセットしている。魔法&罠カードゾーンにカード3枚をセットしている。


「俺のターン、ドロー。魔法カード《シールド・クラッシュ》を発動。守備モンスターを破壊するよ」

「そう来たか。このモンスターを破壊されるわけには、いかないんだ。手札1枚を捨てて、カウンター罠《マジック・ジャマー》を発動。《シールド・クラッシュ》を無効にして破壊する」

「あららっ。手札から速攻魔法《アルパカを呼ぶ笛》を発動。デッキから《アルパカ:攻撃力800・Lv2》を特殊召喚。《アルパカ》をリリースして、《デブアルパカ:攻撃力2400・Lv5》をアドバンス召喚。裏守備モンスターに攻撃する。今度こそは破壊させてもらうよ!」

 眠たげに両目蓋を半開させている、太ったアルパカ。大きく跳躍して、セット・モンスターを押しつぶそうとする。相手モンスターは、《メタモルポット:守備力600・Lv2》。略してメタポ。壷中で、大きな目玉が慌てだす。《メタモルポット》は粉々に砕かれた。

「《メタモルポット》のリバース効果を発動。お互いのプレイヤーは、手札のカード全てを捨て、デッキからカード5枚をドローする」

「アドバンテージを稼がしちゃったね。カード2枚をセットして、ターンエンド」

 伏せたカードは、《クリボー・リカバリー》と《クリボーを呼ぶ笛》。手札には《クリボー》と《エンジェリック・クリボー》もある。攻撃対策は、しっかり張られている。



【3ターン目:ブレオ】LP4000、ドローフェイズ後の手札6枚

(フィールド)
ブレオ:魔法&罠カードゾーンにカード2枚をセットしている。

ダルク:《デブアルパカ:攻撃力2400・Lv5》が攻撃表示。魔法&罠カードゾーンにカード2枚をセットしている。


「俺のターン、ドロー。魔法カード《浅すぎた墓穴》を発動。お互いに墓地からモンスター1体をセットする。手札のカード3枚をセットしておく」

 ダルクくんは《アルパカ》を、ブレオは《メタモルポット》を、墓地からセットしていく。

「墓地から《ADチェンジャー》を除外して、伏せたばかりの《メタモルポット》を攻撃表示に表示形式を変更する。当然に、リバース効果を発動だ。手札全てを捨て、5枚ドロー」

「お嬢ちゃんに、プレゼントをあげるよ。罠カード《強欲な贈り物》を発動。相手プレイヤーは、デッキからカード2枚をドローする。そして、セットしていた魔法カード《手札抹殺》を発動。お互いのプレイヤーは、手札全てを捨て、捨てた枚数分だけドローする」

 ダルクくんは7枚捨て、7枚ドロー。ブレオの策略に気がついたようで、表情がひきつっている。デッキ破壊。ダルクくんのデッキは、14枚にまで減っている。

「モンスター1体を裏側守備表示でセット。セットしていた魔法カード《太陽の書》を発動。伏せたばかりの《ニードル・ワーム:攻撃力750・Lv2》を、攻撃表示に変更する。リバース効果により、相手デッキからカード5枚を墓地に送る。これで、デッキは残り9枚だ」

「永続罠《リミット・リバース》により、墓地から《ニ角獣レーム:攻撃力800・Lv4》を攻撃表示で特殊召喚。手札から《エレファン:Lv2》を墓地に送り、手札から《虚栄の大猿:攻撃力1200・Lv5→3・チューナー》を攻撃表示で特殊召喚する」

「レベル4《ニ角獣レーム》に、レベル3となった《虚栄の大猿》をチューニング!」

「天駆ける雷よ。雲海を切りさき、その蹄を地上に穿て! シンクロ召喚! 轟け、《ボルテック・バイコーン:攻撃力2500・Lv7》!」

「《ニ角獣レーム》がシンクロ素材とされたことにより、相手のデッキからカード2枚を墓地に送る。そして、セットしていた魔法カード《ボルテック・シューティング》を発動。《ボルテック・バイコーン》が存在するとき、相手のデッキ7枚まで墓地に送る。フィニッシュ!」

 全身から稲妻を迸らせながら、黒馬がいなないた。サンダー状の2本角が、頭部から生えている。ダルクくんに向かって疾駆してくる。攻撃でないために、《クリボー》では防げない。《ニ角獣レーム》も後続しての突進。連続してのアタックを受けて、ちっちゃな体が舞いあがった。ダルクくんのデッキは完全消滅した。次のターンで、ドローできない。当然に敗北が決定してしまう。



「WDGPの予選は、3日に渡って行なわれる。どうにも、5種類のスターチップを集めるらしい。3日目にもなると、強豪ぞろいだ。実質的には、スターチップを集めた者による決勝戦進出をかけたバトルとなりそうだ。その日まで残れたらいいな。じゃ、応援しているぜ!」

 爽やかに手を振りながら、ブレオは去っていった。ダルクくんは呆然としながら、呟いている。

「あっけなく、負けちゃった。1ポイントのダメージすらも与えていないのに。ダークネスよりも理不尽な相手だよ。ブレオさんは大会に出場せずに、さらに強いアンドレさんが出るんだって……。というか、何? あの言い方は? まるで、ボクが決勝戦まで残れないみたいな感じじゃない……」

 両手で目尻を拭いだした。顔を覗きこむのは止めておこう。言葉尻がすぼみだして、自信喪失がじわりと伝わってくる。《C》よりも、はるかにハイスピードなデッキ破壊。これがユニコーンの実力なのか。ここまで、あっけなく敗北するとはね。落ちこむのも理解できるの。周囲の人たちが、励ましの言葉を投げかけてくれる。ダルクくんの両肩に腕を回して、ぎゅっと抱擁した。

「負けて悔しいのなら、次は勝てるように立ちあがろう。ダルクくんならできるよ。なんだって、私のヒーローだからね」

 しばらくの沈黙。

「そうだね。ボクはファラオと戦わなければならない。こんなところで、座りこむ暇なんてないんだ。ありがとう。アウスがいなかったら、ずっと落ちこんだままだったよ」

 力強い返事が返ってきた。そんなダルクくんを、ハネクリボーが優しく見守っていた。





【エピソードSP2-ダルクとアウス・その3】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

ダルクはデッキを高速で回転させる上、ガードが出来ても妨害が出来ない欠点を見事に突かれたデュエルといえる。
高速のデッキ破壊は今の環境のデッキ回転を考えると凌げれば決まりやすいね。今は3~5ターンで残りデッキが20枚以下の展開がよくあるし。
高速デッキ破壊の要素が入った新しいテーマでないかな~と思ってしまう。かなり安定したメタ要素だと思うが。
アウスエピソードはかなり省略されているね。まあ、本編にあまり関係ないし問題ないか。

No title

 majesticさん、感想ありがとうございます。

 ダルクのデッキでは、デッキ破壊に弱いです。ビート系の使用者も苦手としていますね。デッキ破壊に関しては、《C》や《ワーム》では遅いですし、1KILL系はデュエルするのに相手が楽しめないところもあります。適度なスピードでデッキ破壊をテーマにしたモンスター群も面白そうです。デッキを喰らうという意味で、ワーム系になるかな。

 アウスの過去話は、重要な所だけ短く纏めました。番外編ですけど、デュエル・シーンもちょこまか入っています。遊戯王小説という名目を意識して。今後のアウスもレギュラークラスに出番が増えます。ゼアルで例えれば、小鳥クラス。
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