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CROSS-36 ウィン・カーウィンの唄

遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX DVDシリーズ DUEL BOX 13遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX DVDシリーズ DUEL BOX 13
(2008/06/18)
KENN、小林沙苗 他

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 十六夜アキとウィン・カーウィンの出会い。

 空一面が暗黒に包まれ、漆黒色の球体が浮かびあがった。周囲にいた人々が、ざわめきながら見上げている。不穏な空気に、気分を悪くしている人もいるようだ。右腕の痣がうずいてくる。まがまがしい気配のする方向に駆けていった。右手甲にスフィンクス・サインの刻まれたデュエリスト。マリク・イシュタールにダークネス。WDGPは波乱万丈な展開となっているようだ。体内から熱されて、二酸化炭素の深まった息が吐きだされた。額からねっとりとした汗が浮かぶ。角を曲がり、商店街広場へと入っていく。クロウが倒れていた。牛尾さんをはじめとする、周囲の人たちが眠りに落ちている。クロウを抱起こすと、かすかに痙攣しながら、薄っすらと目蓋を持ちあげた。

 天馬夜行と名乗るデュエリストが、邪神を召喚したという。クロウが勝利できたとはいえ、何という邪悪さにあふれたモンスターであろうか。残留している闇だけでも、鳥肌が立ってくる。赤い回転灯が瞬いている。救護班の職員たちが、クロウや牛尾さんを担架で運んでいる。闇のデュエルによるダメージは大きく、クロウは意識朦朧としていた。魔術師ジョゼフ・カーウィンにより、多くの人たちが眠りに落とされているようだ。静かであった商店街広場は、野次馬により不安だったにぎやかさを泡立てている。ジョゼフがウィンを探しているらしい。ウィンとは、三眼の魔女であろうか?



 騒ぎが連続しているが、WDGP予選は続いている。今は勝抜くことを考えるんだ、十六夜。擦りきれた声で、クロウは声援を残してくれた。闇のプレイヤーキラーとのデュエルで、5種類のスターチップをそろえられた。さらなるスターチップを集めれば、レアカードとの交換も可能である。余ったスターチップを元手にして増やしていくのもいいだろうか。ゆったりと考えている暇はないようだ。右腕の痣が輝きだした。近い。足を速めて、モノレール・ステーションへと向かっていく。

 ギャラリーが不安そうにざわめいていた。デュエルが行なわれているものの、これでは観戦できない。黒霧が大きく渦巻いており、中を伺うこともできそうにない。触れれば喰われてしまいそうな異界の入口だ。見物人の話からは、2人の女性決闘者が戦っているらしい。ミゾグチさんが不安げな表情をしていたことから、1人はシェリーだろう。シグナー・サインが暴れるように熱光を発している。ここから感じる気配は、《邪神アバター》よりもおぞましいもの。ミゾグチさんたちが止めてきたが、吸いこまれるように私は入っていった。



 気がつけば、広大なる劇場ホールに立っていた。ビロード紅幕が垂れている舞台上に、私はいる。目前に広がるのは階段状の観客席。貴族衣装の紳士に淑女が観劇をしているようだ。違和感が走った。観客全てが白仮面をかぶっている。その奥から覗かれるのは、死体のごとき腐りきった双眸だ。王宮のような造りの建物内に、死臭が湧きたつ。息を吸いこむだけで、眩暈と嘔吐感が競りあがってくる。舞台端では、死人楽想団によるオーケストラが開かれている。聴くだけで、正気がどんどん削られていってしまう。そんな場所でデュエルが行なわれていた。

 安堵の息をつけた。シェリーが勝ったのだ。対戦相手はライフポイントを完全に失っている。黒ゴズロリの衣装をまとった緑髪の少女がうつむいている。既視感が過ぎった。デュエル・ディスクをチェックして、セレファイス・カーターという名前を確認した。

「アキ……。どうして、ここに?」

 シェリーの表情と声音に焦燥が張りめぐらされている。息も荒いようで、焦点もしっかりと合ってない。その傍らでは、《フルール・ド・シュヴァリエ:攻撃力2700・Lv8》が細剣をかまえている。くすくすとした笑いが、流れこんできた。少女がバンダナを剥がすと、額眼がぎょろりと現れた。ストレート・ロングヘアーを弄りながら言放つ。

「十六夜アキだったね? 普通は入れないのに、どうやって忍びこんだのかな? 今はシェリーちゃんと楽しくデュエルをしているんだよ。大人しく観ていてくださいね」

「あなたは、ウィン・カーウィン……?」

「そうですよ。そっちの名前は有名になりすぎちゃったから、過去の名前で登録したんだぁ。三眼の魔女とか呼ばれてね。パパがそうしなさいって。では、ゲーム続行です。シェリーちゃんって、本当に強いですねっ。追いつめられましたけど、絶対に諦めませんよ。最後の最期まで、勝利への希望を抱きつづけたい。それが対戦相手への敬意でもありますから。私のターン、ドロー」

 諦めないとか以前に、彼女のライフは0ポイントなのに。いや、遊星から聞いたことがある。ライフポイントを失っても死なない決闘者が存在すると。発動されているのは、永続魔法《戯曲-黄衣の王》。《黄衣の王:攻撃力1900・Lv10》というモンスターが、ウィン・カーウィンの傍らで唄っている。黄色いボロ布をまとった仮面の怪人だ。こいつも屍人の眼をしている。ローブからは無数の触手が蠢いている。デュエル・ディスクでモンスター効果を調べるも、ギギギと文字がぼやけてしまい確認できない。けたたましいオーケストラが、魂を削っていく。

「《旧支配者イタクァ:攻撃力2800・Lv8》を召喚。自分ライフが0ポイントのときね、このカードはリリースなしで召喚できるのですよ。《旧支配者イタクァ》のモンスター効果を発動。《黄衣の王》から黄衣カウンター1つを除いて、《フルール・ド・シュヴァリエ》を手札に戻します。そして、その攻撃力分だけダメージを相手ライフに与えます。さらに、《旧支配者イタクァ》でダイレクト・アタック!」

 天井まで頭部が届きそうなほどの巨体。薄っすらとした人型の白霧が立ちあがった。赤い双眸が、恒星のごとく輝いている。楽想団がテンポを高め、オーケストラは邪神の悲鳴へと変わっていく。観客たちが哂っている。よく見れば、モンスターとプレイヤーが半透明な紐によりつながれている。

「気がつきましたか。これはね、愛のデュエルなのですよ。デュエルで大切なことは、モンスターとの絆です。プレイヤーとモンスターは結びついており、モンスターへの痛みはプレイヤーに伝わるのですよ。《フルール・ド・シュヴァリエ》に刺された激痛で泣いちゃいました。でもね。モンスターの気持ちが理解できて、デュエルに対する愛も深まりました」

 こう話しているうちにも、《旧支配者イタクァ》が吹雪を巻きあげた。極寒がリアルなものとして、叩きこまれてくる。天井照明近くまで舞いあげられた《フルール・ド・シュヴァリエ》は、落下し木床に打ちつけられた。轟音が鳴り、大量の木片が散る。シェリーが悲鳴をあげるもなく、《旧支配者イタクァ》の豪腕が迫ってきた。彼女のライフが0ポイントにまで削られ、意識を失った。観客席から拍手が、スコールのように広がっていった。そして、視界が歪んでいく。



  耳奥からじんじんと鳴響き、視界がゆったりと回っている。地面が柔らかくなり、膝をついてしまった。脳襞にこびりついているオーケストラが、ようやく薄れていった。虫の羽音のように、ざわめきが聞こえてくる。だんだんと大きくなり、言葉が明瞭なものへとなってきた。

「こいつ三眼の魔女だぁっ! 魔女がいるぞ!」

 嫌な過去を思いだしてしまいそうな驚愕だった。その場を逃げだす少女たちに、遠巻きに眺める者たち。モノレール・ステーション前広場は騒然としていた。いつの間にか、さっきまでいた場所に戻っていたようだ。さきほどの拍手の代わりに、足音が雨打つ。

「貴様。お嬢様を離せ!」

「汚らわしいオジサマが、乙女同士の友情に踏みこまないでくださいますか?」

 ミゾグチさんが大風により吹きとばされた。ビル壁に全身を打ちつけて、そのまま崩れおちた。伸ばした右腕を引っこめながら、ウィン・カーウィンがシェリーを抱きかかえている。穏やかな笑顔で労わっているようだ。優しく金髪を撫でていく。額眼だけが不気味に見開かれている。意識を失いながら痙攣をしているシェリー。このままでは危ない。立ちあがろうとしたが、膝が動いてくれない。《旧支配者》への恐怖が染みこんでいる。目があっただけで、ここまで体が震えてしまうものだろうか。

「デュエルをした者同士は仲間なんだよ。私とシェリーちゃんは親友になれますね。あなたの心を覗かせてもらいますよ。……両親が殺されちゃうという嫌な記憶があるのですね。とても辛いでしょう。こんなモノは捨てちゃった方がいいですよ。私みたいに記憶喪失になれば、苦しまなくてすみますから。だからね。あなたのメモリーを消してあげます。あなたのために!」

 ウィンが哄笑しだした。実体化している《黄衣の王》が、傍らで唄いつづけている。ミゾグチさんを攻撃したモンスターだ。触手を振りあげて、シェリーの頭へと絡ませていく。閃光とともに、不思議なヴィジョンが見えた。巨大砂時計の上側にシェリーが幽閉されている。少しずつ砂が落ちていく。シェリーが苦しそうに、声にならない叫びをあげている。

「あはっ。十六夜アキは視えているのですか。シグナーって、本当に不思議なんですね。この砂はね。シェリーちゃんの記憶なんですよ。全砂がくびれの下に落下しちゃえば、シェリーちゃんの頭に残るものはなくなるのですよ。そこに、私との思い出だけを注ぐんだぁ。これで、シェリーちゃんは私の親友になってくれます。私の友達に、私以外の記憶なんて要りませんからね。あははっ!」

 やっと、立ちあがれた。駆けより、ウィンを叩きとばした。シェリーは意識を失ったままに呻いている。胃底から沸騰してきた。顔を上げて、怒鳴ろうとしたけど……。

 ジョリ、ジョリ、グシャリ。

「シェリーちゃんの記憶がなくなれば、迎えにきますね。それまで、楽しみにしておきます。私って物忘れが激しいのですよ。忘れないように、痛みを刻まなければいけませんね」

「あ、あなた! 何をしているの!?」

 笑顔のままに、彫刻刀で自らの左手首を彫っていった。血玉がぼたりとアスファルトに叩きつけられる。楽しげに鼻歌を唄っている。背筋から寒気が這いあがってきた。

「この場でデュエルしてもいいですけど、お互いにスターチップ5種類をそえろえていますね。どうせなら、決勝戦でぶつかりあいましょうよ。テレビで私のことを否定してくれましたよね? 愛の理解できないあなたに、デュエルを通して分からせてあげますよ」

 激痛に泣きながら、楽しそうに微笑みながら、ウィン・カーウィンは去っていった。言いたいことは山ほどある。だけど、ここまで壊れているとは。冷汗があごから垂れてきた。



「まったく、とんでもないデュエリストがいたものだな。何が愛だ。あの女は正気ではない。おっと、自己紹介を忘れていた。俺はマリク・イシュタール。この大会に参加して、すでに5種類のスターチップをそろえている。ウィン・カーウィン。まったく酷いことをするものだ。記憶を喰わせてしまうとは、さすがの俺も真似はできないよ。さて、十六夜アキといったな。貴様と決勝戦で当たれば、極上の生贄にしてやるよ。究極の痛みと快楽を味あわせてやる。楽しみにするがいい」

 背後から忍びよってきた男が、そっと囁いてきた。握られた古代エジプト意匠の黄金ロッドから、怪しげな力が漂っている。顔の輪郭が、風に揺らぐ炎のように不安定だ。血走った双眸を曲げて、マリクは去っていった。その跡には、不気味な哄笑が残されていく。





【エピソード3-WDGP予選編・その20】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

あれ、なんか割りとエグい。ウィンはどう頑張っても怖い部分が出てしまうね。
乙女同士の友情、汚れたオジサン、百合の影響が垣間見える。

9月の新制限から再度大会に出て結果を出すためにコアキメイルを実践レベルに調整しているのだが少し問題がある。
ドラゴは光闇を封殺できるからメインデッキに投入しておきたい。メインデッキに光闇を使わないデッキはあるがエクストラから光闇を出さないデッキはかなり限られる。採用されやすいエクシーズには光闇が多いしね。だがこちらも同様に光闇エクシーズが使えなくなる。ウロボロス、ホープなどがダメになるとシャークドレイクやアルヴェルドあたりになって牽制力が下がる。
他にもハンデスやインゼクターがなくなった分、弱点は減ったが、維持したい時に維持コストがなかったりと、以前としてジレンマや問題点が多い。
メタ、パワーの高さは優秀なのに一度も純正テーマで結果が残せない理由が分かってきた。
新しい光闇以外の相性のいいランク4が出るまでコアキメイルで出るのは待ったほうがいいと思う?

No title

 majesticさん、感想ありがとうございます。

 リスカシーンは生理的にやばいかも。ウィン・カーウィンについては、精神的なやばさも大きいです。ヤン百合キャラしていましたけど、読んだ百合漫画の影響もありますね。

 コアキメイルは、種族を纏めるなどしないと、コストなどが厳しそうです。高攻撃力で光闇封じは強力ですね。《コアキメイル・マキシマム》もあると、コスト維持が楽かな。確証持って言えませんけど、純粋コアキメイルにきつそうなイメージが。
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