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CROSS-54 死の戯曲! 十六夜アキVSウィン・カーウィン

遊☆戯☆王5D’s DVDシリーズ DUELBOX【2】遊☆戯☆王5D’s DVDシリーズ DUELBOX【2】
(2008/12/17)
宮下雄也、星野貴紀 他

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 元魔女VS魔女の決闘です。

 胸を押さえると、ドギマギとした鼓動が伝わってくる。とんでもない第3試合だった。ダークネスが本性を現わして、スタジアムを闇一色で包みこんだ。フィールドを不確定に漂いながら、ダークネスが相手を呑みこもうとしていた。私にも攻略できる自信はない。デュエルに勝利したのは、マリク・イシュタール。狂気と憎悪は、ダークネスをも喰らいだした。そこに跳びこんできたのは、容貌からしてアルマ・ウェイトリィであろう。彼女はダークネスの助言を受けながらも、トラゴエディアに勝利できたのだ。感謝を抱いているのかもしれない。それにしても、アルマは体調がよくなったのだろうか。

「次は十六夜の試合か。相手は【三眼の魔女】らしいからな。気をつけた方がいいぜ」

 背後から声をかけてきたのは、警備衣装のクロウ。終った試合について考えこんでいる場合ではない。今日最後の決闘が始まろうとしている。ウィン・カーウィンが対戦相手だ。

「心配ないわ。絶対に負けないから。シェリーにかけられた呪いを解かなくてはね」

「ミゾグチから聞いたが、意識不明のままらしいな。シェリーを倒すとは、かなりの実力者だぞ。彼女だけではなく、十数人の少女がやられたらしい」

 語尾が重々しく落ちていく。クロウの拳が震えていた。

「彼女たちを助けるためにも、ウィン・カーウィンを倒さなくては」

「まっ、十六夜なら勝てるって信じているぜ。特定の選手に肩入れしちゃいけない立場だけど、そんなの関係ないや。おっと! 早く持場に戻らないと、牛尾の旦那にどやされてしまう」

 クロウは早足で去っていった。仲間たちが見ていてくれている。それだけでも、勇気が満ちてくる。遊星は研究室にいるが、テレビでWDGPをチェックしているだろう。さすがに明日には来てくれるそうだけど。MCの呼びかけが流れてきた。恐怖心を抑えながら、私は決闘場へと歩いていく。



「ごきげんよう。十六夜アキさん」

 不安にどよめくスタジアムを背景にして、ウィンが挨拶をしてきた。上品に人差指を口元にそえている。こうして眺めていると、温厚な少女にしか見えない。選手専用の観客席へと視線を置いた。ダークネスを抱いているダルクと、アンドレが並んでいる。アルマはいないようだ?

「第4試合の勝者が、マリク・イシュタールと対戦できるようですね。あの人は危険です。気をつけた方がいいですよ。闇のデュエルで倒された参加者も多いと聞いています。許せない! デュエル・モンスターズは憎しみながら行なうものじゃないのに。絆を結びつけるためにあるのに」

「あなた自身が、人を傷つけている……」

「十六夜アキさん。大変な状況になっていますけど、楽しくデュエルをしましょう。デュエルをした者同士は仲間なんですよ。あなたとは、正々堂々と戦いたい。あなたは私を否定しましたけど、あなたを憎んでしまいましたけど、デュエルを通して分かりあえると信じています」

 左腕を上げて、頬を撫でてきた。袖がずりおちて、木目細かい白肌が現れた。何だろうか? 赤線が奇妙な模様を描きこんでいる。それが何かを理解できると、背筋から寒気が這いあがってきた。

「ああ、これですか。アキさんを想いながら縫いつけていたんですよ。アキさんの顔を描いたつもりですけど、似ていますか? とっても痛くて、気持ちいいですよ。あなたの記憶を根こそぎ奪いたい。かわいそう。黒薔薇の魔女として迫害されたメモリーを除いてあげたい。真白になったアキさんを傷つけて、傷つけて、愛の素晴らしさを染みこませてあげたいよ。ずっと私の部屋に置いておくわ」

 気がつけば、抱擁されていた。死臭が鼻にまとわりついてくる。紅潮しきった笑顔。首筋に唇を押しつけられた。ねっとりとした液音が、耳奥へと侵入してくる。気持ち悪い。

「シェリーもアキも、私だけのモノにしてあげるよ。あなたの腕にも縫いつけるからね」

 ウィンを突きとばした。地面に転がり、うっとりとしながらバンダナを外す。額では眼球が蠢いていた。どよめきがスタジアムを駆けぬけていく。三眼の魔女が狂笑しだした。立場的にダルクの仲間らしいけど、この子だけは許せない。

「あなたは愛について、何も分かっていない。ただの独りよがりだわ」

「かわいそう。辛い人生を送ってきたから、ずいぶんと歪んだ性格になっているようですね。そんなアキさんを、私は救いたい。愛を分からせてあげたい。さぁ、始めましょう!」

「激闘が続くWDGP決勝戦。今日最後の試合となりました! 十六夜アキ選手とセレファイス・カーター選手のデュエルが始まるぅーっ! またもや、不穏な空気の予感がするぞ!」



『デュエル!』



【1ターン目:ウィン】LP4000、ドローフェイズ後の手札6枚

 回転していたルーレットが止まる。自動発動されるフィールド魔法はないようだ。

「私のターン、ドロー。魔法カード《黄衣の印》を発動。手札から永続魔法《戯曲-黄衣の王》を手札に加えます。そして、発動!」

 右手甲に描かれているのは奇妙な紋章。大仰な手振りで見せつけるように突きだした。竜巻が渦まいて、その中心に本が現れる。黄衣の王。表紙にそう題名されていた。異様な妖気が、むんむんと漂ってくる。シグナーの痣が反応している。寒気が止まらない。

「《チョー=チョー人:攻撃力1000・Lv2》を召喚。このカードが召喚されたとき、このカードをリリースして、お互いに1000ポイントのダメージを受けます」

 矮躯の集団が雪崩れこんできた。棍棒や剣を手にしている。何という憎しみにあふれた表情をしているのだろうか。敵味方をかまわずに襲いかかる。実体化した激痛に全身をすくめてしまう。ウィンが後頭部を殴りたおされ、短剣で追討ちをかけられる。

「痛い。痛いよぉ。アキさんと同じ痛みを、こうして味わえているのですね。あははっ! こうして、心が通じあっていくのですよ。えぅっ、痛いよ……」

 泣きながら、ゆぅらりと立ちあがっていく姿が不気味だ。2人ともライフが3000ポイントにまで減らされていく。そのまま、ウィンはエンド宣言をした。



【2ターン目:アキ】LP3000、ドローフェイズ後の手札6枚

(フィールド)
ウィン:永続魔法《戯曲-黄衣の王》が発動中。


 伏せカードもなしにターンを終えるなんて。油断はできない。

「私のターン、ドロー。《フェニキシアン・シード:攻撃力800・Lv2》を攻撃表示で召喚。このカードを墓地に送って、手札から《フェニキシアン・クラスター・アマリリス:攻撃力2200・Lv8》を特殊召喚する。このカードでダイレクト・アタック!」

 巨大アマリリスから発射される弾丸。ウィンを吹きとばして、ライフを800ポイントにまで削った。

「《フェニキシアン・クラスター・アマリリス》が攻撃したダメージ計算後に、このカードを破壊する。このカードが破壊されたとき、相手ライフに800ポイントのダメージを与える」

 赤色弾丸の追加放射。ウィンのライフポイントは消滅した。あっけなく勝てた。いや、ウィンとシェリーのデュエルを思いかえす。彼女のライフは0ポイントになっていたはずだ。仰向けに倒れこんだウィンが、むくりと起きあがった。三眼がピンポン玉のように見開かれている。三日月状に広がった口から、人間とは思えない笑声が漏れていた。激しい恐怖により、足が引いてしまう。

「嬉しいよ。ここまで私を傷つけてくれるなんて。あははっ! アキさんに恋してしまいそうですよ。あなたが欲しい。あなたと結ばれたい。私の愛を受けとってもらいます。《戯曲-黄衣の王》が出ている状態で自分ライフが0ポイントになったので、手札から《黄衣の王:攻撃力1900・Lv10》を特殊召喚し、黄衣カウンター3つを乗せます。このカウンターがあるかぎり、ライフ0でも敗北しません。攻撃表示であるかぎり、《黄衣の王》は破壊されず、相手のカード効果も受けません」

『いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい! あい! はすたあ!』

 地獄の底から聞こえてくるようだ。不快な呪文がフィールドに湧いてくる。身長2メートルほどの怪人が浮きあがった。黄衣を身につけ、白仮面をかぶっている。袖口や足元からは、にょきにょきと触手が蠢いている。観客席から悲鳴が輪唱しだした。逃げだす人も少なくない。

「おぉっと! どういうことでしょうか。あちらこちらから怪奇生物が湧きだした! あまりにも生々しい! 本当にソリッド・ヴィジョンか!」

 白仮面をかぶった触手塊どもが、フィールドを囲んでいる。その数は十体を超えている。あまりにも酷すぎる異臭。吐気がこみあがってきた。空一面が暗黒色に渦まいている。まるで、スタジアム全体が異界に呑みこまれたかのようだ。ここで引くわけにはいかない。

「フィールド魔法《ブラック・ガーデン》を発動。カード3枚をセットして、ターンエンド。墓地から《フェニキシアン・シード》を除外して、《フェニキシアン・クラスター・アマリリス:守備力0・Lv8》を守備表示で蘇らせる。《ブラック・ガーデン》の効果により、このカードパワーは半分になり、相手フィールドに《ローズ・トークン:攻撃力800・Lv2》が特殊召喚される」

 暗黒の下、黒薔薇が咲乱れる庭園か。すっかりと闇色に染まった光景となってしまった。



【3ターン目:ウィン】LP0、ドローフェイズ後の手札4枚

(フィールド)
ウィン:《黄衣の王:攻撃力1900・Lv10・黄衣カウンター+3》&《ローズ・トークン:攻撃力800・Lv2》が攻撃表示。永続魔法《戯曲-黄衣の王》が発動中。

アキ:《フェニキシアン・クラスター・アマリリス:守備力0・Lv8》が守備表示。フィールド魔法《ブラック・ガーデン》が発動中。魔法&罠カードゾーンにカード3枚がセットされている。


「私のターン、ドロー。永続魔法《戯曲-黄衣の王》の効果により、黄衣カウンターが1つ乗せられます。魔法カード《カシルダの歌》を発動し、黄衣カウンター2つを追加します」

 《黄衣の王》が触手を広げて、名状しがたき唄を奏でだした。触手塊どもがフルートを演奏しだす。鼓膜を鳴らすだけで、恐怖が精神に注がれていく。観客席から悲鳴が耐えない。溜まった黄衣カウンターは5つ。5回のダメージを与えなければ、彼女を倒せないようだ。

「おいっ、どうなっているんだ!? 会場の外に出られないぞ!」

 そんな怒号が、いくつも聞こえてきた。異形どもが踊どりあかしている。人間のものではない狂笑が、皮膚から染みこんでくる。呼吸が荒くなってきた。手先の震えが止まらない。足が地面に着いている感触がまるでない。逃げだしたい気分がかすりだす。

「あははっ! 楽しいサバトですね。心躍ってきましたよ。《旧支配者イタクァ:攻撃力2800・Lv8》を召喚。ライフが0ポイントのとき、リリースなしで召喚できるモンスターです」

 《ブラック・ガーデン》の効果により、その攻撃力は1400ポイントに割れる。私のフィールドには《ローズ・トークン:攻撃力800・Lv2》が攻撃表示で特殊召喚される。

「《黄衣の王》から黄衣カウンター1つを取りのぞいて、《旧支配者イタクァ》のモンスター効果を発動。《フェニキシアン・クラスター・アマリリス》を持主の手札へと戻し、その攻撃力分だけダメージを与えます。そして、《ローズ・トークン》に攻撃しちゃいます」

 半透明な巨人が立ちあがった。双眸だけが恒星のように赤光りしている。両腕を持ちあげ、竜巻を放つ。上空彼方へと吹きとばされた《フェニキシアン・クラスター・アマリリス》が、氷漬けの状態でフィールドに落下した。激しく呻いてしまう。2200ポイントのダメージを受けた。

「愛のデュエルだよ。プレイヤーとモンスターは紐でつながっています。モンスターも大切なパートナーですからね。あはっ! 傷みを理解しあって、愛情を深めていくのですよ」

 《旧支配者イタクァ》が《ローズ・トークン》を殴りつけた。《ブラック・ガーデン》により攻撃力半減していて助かった。それでも、ライフは200ポイントにまで減らされた。氷礫の混ざった冷風を叩きつけられて、激痛が全身を喰いつくす。こんなデュエルを、私もやってきたんだ。薄まっていく意識の中で、ウィン・カーウィンの微笑が差しこんできた。

「《ローズ・トークン》でダイレクト・アタック。これで勝負がつきますね。私が勝てば、アキさんの記憶を消去してあげますよ。一生、私の傍にいるといいわ」

 棘が目前に迫ってきた。





【エピソード4-WDGP決勝戦編・その12】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

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