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CROSS-57 アウスのメモリー

遊☆戯☆王5D’s DVDシリーズ DUELBOX【2】遊☆戯☆王5D’s DVDシリーズ DUELBOX【2】
(2008/12/17)
宮下雄也、星野貴紀 他

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 デュエルなしの日常回です。アウスがメイン・ヒロインで。

「ルアくんは賢いと思うよ。カードの知識を活かして、上手くデュエルしているじゃない。その気になれば、勉強だってできる。もしかしたら、自分は学問は苦手とか決めつけていない? ルアくんが頑張っているのは基礎だから、毎日を少しずつやっていれば覚えていけるよ」

 テーブルに教科書やノートが広げられている。酷いテスト結果を見つけ、ダルクくんが勉強を見ることにした。弟ができたみたいで嬉々としている。ルアにべったり密着して、スキップするような調子で指導している。学問とデュエルは違うような気もするが、やたらと誉めたがる性格である。紅潮しながら唸って、ルアは集中しきれていないようだ。

「ダルク姉ちゃん。デュエルしようよー」

「この数式問題が解けたらね。脳内計算が早くなれば、デュエルも有利になれるの」

 レストランでのディナータイムでは、マナーについてルアに注意を繰りかえしていた。そんな2人を眺めながら、ルカがくすりと笑っている。ダルクくんのヒントに導かれながら、ついに解けたようだ。ルアの頭をなでなでする。こういう光景を目にしていると、8年前を思いだしてしまう。



 ビルの屋上に豪邸が建っている。ルアとルカは、2人きりで暮らしているようだ。両親は健在であるが、仕事で海外を回っているという。私たちも似たような生活を送っていた。人間社会から隔離中のダルクくんと一緒に、深森の屋敷に住んでいたのだ。不動遊星との出会いから、2人の世界が開けたそうだ。両親も落ちついたようで、一緒に暮らせるという。その代償として、シティを離れなければならない。仲間たちとの別れを迫られて、悩みぶかげに話していた。

「パパやママに甘えられるのは、子供の特権なんだよねぇ」

 D・ナポレオンを抱きかかえながら、ダルクくんがソファに沈みこんだ。ローブを脱いで、すっかりと気を緩めている。どこか遠くを見やるような眼差しだ。

「ダルク姉ちゃんの両親って、どんな人なの?」

「パパは会ったことないよ。ずっと遠くにいるらしいけど。ボクが産まれてから、ママとは引離された。ボクを出産したのが負担になったらしくて、10年近くも入院してた。メールや電話で連絡はしているけど、仲は良好なんだ。ボクの両目が毒になるからって、ナイ神父が会わせてくれないの」

 重い過去話で、双子さんの表情が曇っていく。反応ぶりから察するに、眼については知っているようだ。D・ナポレオンがうっとりと聴きいっている。何かを食べているような雰囲気。ダークネスだった存在が、すっかりと大人しくなっている。

「ヒータという女性が、親代わりに育ててくれたよ。ちょっと怖いけど、とっても優しいんだ。狂気山脈とか無名都市にも連れていってくれた。アウスと会わせてくれたのが一番嬉しい」

 ダルクくんと同じ表情を、私もしているのだろう。ジョゼフ・カーウィンについては言及しない。5歳まで育てられ、学問についても彼から学んだという。一時的に懐いていたそうだが、現在では嫌いぬいている。人体実験を繰りかえし、数えきれないほどの命を犠牲にしてきた魔術士だ。



「そうだ。WDGPの特別番組が放映されているけど観ませんか?」

 ルカが話題を変えた。準々決勝が映されていて、重々しい空気が霧散してしまうほどに盛りあがっている。ウィン・カーウィンVS十六夜アキのデュエルは、規制が入っているようだ。ルアとダルクくんのタッグデュエルまでが紹介されていた。すっかりと微笑ましいカップル扱いである。アンジェラというリポーターのヒヤカシを、ダルクくんは理解できない。ちょこんと小首を傾げている。チョコスティックをつまむと、ルアの口中へと移した。

「お風呂が沸いたみたい。ダルクさんから浸かりますか?」

「うーん。バスルームって広いのかな? そうだったら、4人で入ろうよっ。にぎやかで楽しいよ」

「何でだよっ! 女と風呂はいやだよ! ダークネスと入ってくる」

 きつい調子の声。真赤に染まった顔のまま、D・ナポレオンを持っていった。ずかずかと足音が遠ざかっていく。残されたダルクくんは唖然としている。

「怒らしちゃったかな? もしかすると、酷いことを言ったかもしれない。どうしよう……」

「大丈夫だよ。照れているだけ。ダルクさんって、天然さんかな?」

 ダルクくんは、ルカと喋りだした。クリクリー。ハネクリボーとクリボンが仲良く遊んでいる。精霊について話題にしているようだ。何となしに、ダルクくんを膝上に乗せた。頭をなでなで。その様子を、ルカが注視している。マリク・イシュタールが大画面にアップとなった。

「うわっ! 凄い表情ね。こんな顔をゴールデンタイムに放映したら、苦情が殺到するわ」

 黄金鎧のジル・ド・ランスボウが、マリクに挑んでいる。騎士になりきっているようで、セリフが大仰しい。《マスクド・ナイトLv3》を召喚させて、レベルアップさせていく。ダメージを与えるモンスター効果を有しているが、《痛魂の呪術》でリフレクト。来宮虎堂やプロフェッサー・フランクに続いて、彼も敗北してしまった。心配そうに、ルカが溜息をついた。

「アキさん、大丈夫かなぁ? 準決勝でマリクと戦うみたいだけど」

「大丈夫だよ。ボクも戦ったんだ。アキさんは強いから。あんなヤツには負けないよ」

「そうよね。アキさんが勝つって信じよう。それにしても、妹っていいかも……」



 ルアとダークネスが風呂上り。私とダルクくんでバスタイムとなった。手を引かれてガラスドアを開けると、クリーム色が視界一面を塗りつぶした。綺麗に磨かれたバスルーム。心地いい香りが漂ってくる。4人で入浴するには狭いかもしれない。背中を流しあう。ダルクくんは泡まみれになると、シャボン玉で遊びだす。ビスクドールみたいな容姿で、白磁のような肌をしている。スポンジで押えると、柔らかさと滑らかさが返ってきた。髪が伸びているので、ちょっとだけカットすることにした。切られた髪端が、虹色の泡となって消滅していく。

「ありがとう、アウス。髪が綺麗にまとまったよ。次はボクが洗うからね」

 「変身」という小説を読んだことがある。ある朝目覚めると、巨大な虫になっていた。私の場合は、虫になって、虫の社会へと忍びこんだ。虫たちの積んできた知識を吸収して、同胞へ捧げる予定だった。転移装置の故障により戻れなくなった。永遠に虫として、虫の社会で生きることになった。人生を諦めたけど、必死になって世話してくれる虫がいた。いや、彼女もアウトサイダーである。8年で慣れてきたとはいえ、人間を異形と感じてしまう。好ましくなってきたけど、ときどき怖い。

「アウス。どうしたの? 震えているけど」

「大丈夫だよ。ダルクくんがいるから、すぐに落ちついてきたの」

 柔らかい指先が、頭皮を優しくマッサージしてくれる。持ちこんだシャンプーから、甘い香りが降りてくる。人に洗ってもらうのは気持ちいい。出会ったばかりの頃を思いだす。排泄も、歩行も、会話もまともにできなかった。転移装置のトラブルにより、魂が肉体からずれていたのだろうか。世話からリハビリまでしてくれて、人間として生活できるようになった。もうイースの社会には戻れない。同胞が迎えにきても拒むであろう。親友の元から、一瞬たりとも離れたくない。

「たくさん歩いたから、足が痛いでしょ? マッサージする?」

「ありがとう。お願いするね」

 湯船に浸かると、疲れが湯にしみだしていった。伸ばした足先を、ダルクくんが揉みほぐしてくれる。静かに2人きりですごすのも幸せだ。よくよく考えると、アルマもいるから3人かな。ずっと続いてほしい。湿度と温度が高くて、幻惑的な気分になってしまう。突然にくすぐったさが、足裏を覆った。ダルクくんが、くすりと微笑んでいる。

「ダルクくん。悪戯しちゃ駄目だよ」

 逃げようとしたけど、捕まえて仕返しだ。両腕を回しこんで、脇腹をくすぐった。しばらく笑いころげると、浴壁にもたれかかりだした。やりすぎたかな? 寄せあうように並んで、水滴垂らしている天井を見上げた。お互いの肩が触れあって、安堵感がこみあげてくる。

「明日はアンドレさんとの試合だね。鬼柳さんとのデュエルはすごかった。《サンダー・ユニコーン》と《ホーン・ケルベロス》が手強いよ。決勝戦でアキさんにリベンジしたい。明日が楽しみっ」

 ダルクくんを引寄せて、ゆっくりと頭を撫でた。



 パジャマの私は、ルアと屋上デュエルをしていた。ルカから貰った《ジェムナイト》のテストプレイにつきあってくれている。夜空を背景として、真白なワンピース姿のダルクくんが立っている。さっきまでは、彼女が対戦をしていた。ルアは見蕩れてしまい、集中しきれていなかった。からっとした空気が涼しくて、水蒸気の重々しいバスルームから解放された気分になる。

「墓地から《ガジェット・ポット》を除外して、モンスター効果を発動。墓地から《D》3体を除外して、デッキからカード2枚をドローするよ」

「《ガジェット・トレーラー:攻撃力1300・Lv6》のモンスター効果を発動。手札の《D・マグネンU》と《D・マグネンI》を墓地に送り、攻撃力1600ポイントアップ! そして、速攻魔法《リミッター解除》を発動! 《ジェムナイト・ルビーズ》に攻撃!」

 変形したトレーラーからの砲撃を受け、《ジェムナイト・ルビーズ》は爆散した。私の敗北だ。素直に勝利を喜んでいる。融合系カードを投入しすぎて、デッキを回せなかったようだ。ちょっと待ってもらい、デッキを再構築していく。私を避けていたルアも、ずいぶんと馴染んできた。

「シティでも、星は視えるんだよ。ほらっ、あそこ」

「本当だ。ちっちゃく輝いて綺麗だね。あれっ? 魔法陣みたいのが、空に光らなかった?」

「見間違いじゃないかな。さすがに、ソリッド・ヴィジョンの悪戯じゃないだろうし」

 ルカとダルクくんが、すっかり仲良しさんだ。2人でD・ナポレオンを弄っている。言葉を話せなくなったダークネスは、小動物のように鳴いている。デッキ構築が終ったので、デュエル再会だ。私も戦えるようになりたい。ダルクくんのサポートだけでなく、タッグを組めるようになりたい。

「セーラ姉ちゃん。すっごく頑張っている。すぐに強くなれるよ。オレも弱かったけど、努力したらWDGPで勝てるようになったもん」

「ありがとう。ルアくんとデュエルして楽しくなってきた」

 虫世界で遭難したけど、少しずつ温かさが伝わってくる。デュエル・モンスターズが法則を支配している世界。このカードを通せば、私も人間に触れていける。デュエルを続けていたけど、双子さんは子供なのだ。眠たそうに、あくびをしている。ちょこっと涙を漏らした2人を、ベッドルームへと連れていった。ルカはD・ナポレオンを抱えたまま眠りについた。

「寝顔が可愛いね。ボクもずっと年上だから、しっかりとしなくちゃ」

 夜風に波打つスカートを押えながら、ダルクくんが微笑んだ。眼下では、夜景が広大に煌いている。お姉さんのように面倒を見てくれたけど、私の身長も伸びていき、ダルクくんが妹みたいになっていた。でも、また元通りになりそうな気がする。屈みこむと、頭を撫でてくれた。出会ったばかりのメモリーが、脳裏を流れていく。鼓動が駆けていき、胸が熱くなってきた。





【エピソード4-WDGP決勝戦編・その15】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

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