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CROSS-Ⅰ AFTER OF WDGP

遊☆戯☆王5D's ヴォーカルベスト遊☆戯☆王5D's ヴォーカルベスト
(2012/09/19)
TVサントラ

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 大会が終っての日常パートかな。番外編的なものが続きます。

 手すりに摑まりながら、右足を踏みだした。前進したのを確認すると、次は左足を持ちあげる。イースという種族であったが、人間として生きるはめに陥った。あの事故さえなければ、こんな屈辱に遭わなくてすんだのに。栄養摂取から排泄物の処理まで、自分だけでは何もできない。ダルクという幼生体に世話されている始末だ。こいつは人間ではない。両瞳から発する波動には、脆弱なる人間の精神では耐えられないだろう。ヨグ・ソトースの仔。研究対象として興味あるが、同胞の下へ帰れないのならば意味もない。希望は失われた。

 廊下を掃除マシンが過ぎっていく。これを製作するほどの技術があるのか。書物庫を案内され、研究内容を紹介された。イースと渡りあうほどの知識を有しているようだ。10メートルほど歩くと、ぐぅらりと全身が揺れてきた。この肉体には慣れきっていないようだ。幼生体の身体は、とても貧弱である。私よりも大柄なダルクが支えてくれた。車椅子まで運んでくれる。

「アウス。歩けるようになってきたね。この調子で頑張ろう」

 紅い双眸が迫ってきた。なれなれしくするな。右手は自由に動かせる。頭を殴りつけてやった。痛覚がないらしく、痛みを与えられないのは残念だが。それでも怒らず親身になってくれる。バスルームで洗ってくれて、美味しい料理を用意してくれる。どこまでも献身をつくし、私を殺そうとする。居心地のよさに、イースとしての誇りが溶かされていきそうだ。

「ねぇ、苦しいの? どうして泣いているの?」

 テラスで夜空を眺めている。4億年も経過すると、星の位置は変化しているようだ。宇宙の壮大さは変わらないようだが。新鮮な空気が流れこんでくる。視界を下げると、森がどこまでも広がっている。冷えてしまわないようにケープをかけてくれた。温かいのは、ダルクが抱きしめているから。梟の啼声が、ほぅほぅと聞こえてきた。

「アナタハ……。ドウシテ……ワタシノタメニ……」

 発声器官を何とかして絞った。最後まで言えなかったけど、ダルクに通じたようだ。

「友達になってほしいから。アウスが来てくれて、とても嬉しかったよ」



 暗黒に包みこまれる温かさ。私は机にもたれていた。モーメントシステムを調べているうちに、眠りこんでしまったようだ。8年前を思いだす。初めてダルクくんを撫でたときを。どうして、私は親友を叩いたりしたのだろうか。過去に戻って、自分自身を殴りつけてやりたい。

 背伸びをして、白衣を羽織った。ゾラから住居を借りている。ホテル暮らしだと金がかかるだろうと、不動遊星が紹介してくれたのだ。優勝賞金があるとはいえ、節約に越したことはない。チーム5D’Sの拠点だったこともあり、ダルクくんは目を輝かせていた。ガレージだけあり、機械弄りがしやすいのも利点だろうか。野外に上ると、微風が舞いこんできた。

「俺のターン、ドロー。《疫病狼:攻撃力1000・Lv3》を召喚。モンスター効果により、このカードのパワーを倍にする。攻撃力2000となった《疫病狼》をリリースして、罠カード《魔のデッキ破壊ウイルス》を発動。あんたのデッキは、ローパワーなモンスターで構築されている。手札もフィールドも、ことごとく殲滅させてもらうぜ!」

「手札の《だめクリボー》を捨て、カウンター罠《クリボー・カウンター》を発動。《魔のデッキ破壊ウイルス》を無効にして、破壊しちゃうよ!」

 WDGPで優勝したせいか、腕試しを挑まれてくる。ダルクくんは喜んで受けていた。《神殿を守る者》などなど、対策を仕掛けてくるデュエリストも多い。それこそが、決闘者としての成長に拍車をかける。大会終了から6日が経過したけど、こなした決闘数は膨れあがっている。挑戦者だけでなく、マスコミさんも押寄せてくる。おかげで、近くの喫茶店は繁盛しているようだ。

「永続魔法《エクトプラズマー》を利用させてもらうね。《死者蘇生》で復活させた《ジャイアント・オーク:攻撃力2200・Lv4》をリリースして、1100ポイントのダメージを与えるよ」

 ダルクくんが勝利した。私に気がつくと、満面笑顔でピースを送ってくる。駆けよりたかったけど、新たなるデュエリストが勝負を申しこむ。頑張ってね。私は車庫へ降りていった。ダルクくんはライディング・デュエルにも挑戦している。遊星さんが教えこんでいるようだ。D・ボードは造っておいたが、D・ホィールの改良は進んでいない。ダルクくんにはデュエルに専念してもらい、私のみで作業を進めている。イースが製造している精密機械と比べれば、単純な構造だ。頑張っていこう。



「この研究結果は、君が導きだしたものか?」

「そうだよ。イースは似たような永久機関を実用しているからね。飲みこむのも早かったの」

 入ってきた不動遊星が、PCを眺めていた。許可を与えると、あちらこちらのデータを並べだした。興味深げに読みこんでいる。打鍵音が響いてくる。モーメントシステム開発者の息子であるらしい。制御システム・フォーチュンを研究しており、モーメントの暴走を抑えようとしている。

「ダルクは面白いデュエリストだ。WDGPに優勝しても、上昇志向は衰えない。デュエルレベルを上げようと、限界突破する勢いで頑張っている。バランス感覚もよく、ライディングも身につけている。さっそく、ルアに勝てたようだ。うかうかしていると、俺も負けてしまう」

『アンドレさんも、鬼柳さんも、ルアくんも、次こそ勝とうと頑張っている。ボクは優勝できたけど、ここで暢気にしてたら転がっていくだけだよ。何よりも、ファラオを倒すという使命があるからね。立ち止まっている暇もないんだ。今まで以上に頑張るよ!』

 ダルクくんの言葉が脳内再生される。

「とてつもない量のデータだ。D・ホィールのスピードアップにも期待できる」

 私の背後へと近づいてきた。ボルガー&カンパニー社製のミニタイプ。ホワイトカラーでハネクリボーが描かれている。カスタマイズして、モバイル装置からモーメントエンジンの出力を調整している。じっくりとした視線が【クリボー号】に注がれた。

「いい感じで、完成に近づいているな。しかし、問題があるようだ。年齢的な理由により、ダルクに免許が下りなそうにもない。18歳だと説明しても、なかなか信じてもらえない。証明もできずに困っている。狭霧や牛尾にも頼んでいるのだが」

「身体は子供のままだけど、ちゃんとした18歳だよ。私と同年齢。出会ってから、8年間を一緒に過ごしてきた。とても大切な家族なの」

「君たちには、深い絆があるようだな」

 回想するかのように、辺りを見渡している。ここを拠点としてWRGPを勝ちぬいたという。ブルーノ。そんな声が、かすかに漏れてきた。背後から覗きこんで、彼なりのアドバイスを送ってきた。イースの知力よりも、長年にも渡る経験が有力であろう。ずいぶんと参考になる。

「フォーチュン開発はいいの? 忙しそうだったけど」

「阿久津に追いだされたよ。研究も最終段階を迎えているし、何よりも異変が起こっている。我々に任せて、そっちに手をつけろ。くるくる回りながら、そう説得してきたよ」

「なぜ回るの?」

「阿久津だからさ。優秀な技術者として、君を紹介したくなってきた」

 チーム5D’Sの不動遊星。ダルクくんが憧れるのも理解できた。並びあってモーメントについて議論していると、知的好奇心が湯水のごとく湧いてくる。ダルクくん以外の相手なのに、言葉がほとばしってくる。胸内がすっきりとしてきた。時間が経つのも早いようで、D・ナポレオンを抱えこんだダルクくんが呼びかけてきた。ディナータイムのようだ。



 ダルクくんも手料理を作るけど、基本的には外食に頼っている。喫茶店でのディナー。藍色も濃くなり、涼風が夜を運んでくる。ぽつぽつと、街灯が浮かびあがっていく。早く食べなければ、チーズカレーが冷えてしまう。ダルクくんは、少しずつ丁寧に食していた。

「ダルクちゃん、凄いんだね。WDGPで優勝するなんて。私も吃驚しちゃったよ」

 話しかけてきたウェイトレスはステファニー。ダルクくんに優しくしてくれた女性らしい。そのせいか、ダルクくんも好意的に接している。テーブルでは、D・ナポレオンがケーキを食べていた。角にリボンが結ばれている。ステファニーが悪戯をしたのだろう。

「ダルクちゃん効果で売上げもアップして、マスターが歓喜してたよ。デュエリストが注文するし、ブルーアイズ・マウンテンまで売れまくり。私としてはね。ダルクちゃんが受けいれられたのが嬉しいかな。初めて会ったとき、とても悲しそうな表情をしてたね。でも、素敵な笑顔になっているよ。仕事をしながら観戦もしているけど、たくさんの人と交流して楽しそう」

「自分では分からないけど、笑顔になっているんだぁ。あんな眼をしていたから、ずっと森屋敷に閉じこめられていたの。アウスがいてくれたから幸せだったけど、こうやって人と接していくのって楽しいね。デュエルを通して仲間になっていける。マリクみたいな人もいるけど」

「マリクとのデュエルは怖かったね。ダルクちゃん、本当に大丈夫だったの?」

「へっちゃらだよ。アウスがいるから、元気全快しちゃったの」

「話を聞いていると、アウスさんと仲がいいんだねぇ。羨ましいなぁ。WRGPではホセさんが走りだして吃驚したけど、WDGPも衝撃的な展開が多かった。いろいろあったけど、無事に終ってよかったよ。アキさんも元気になっているようで安心だね」

「安静が必要だけど、順調に回復しているみたい。また、デュエルしたいなぁ」

 微笑みながら、ステファニーがダルクくんに抱きついた。深く吐息をついてしまう。ダルクくんが誘ったけど、遊星さんはどこかに行った。彼にも用事があるのだろう。周囲席にも、ぽつぽつと人がいる。ステファニー以外にもウェイトレスがいて、のんびりと働いているようだ。

「ねぇ、アウスさん。好きな人ができたんじゃない? 明らかに恋をしている表情になっているよ。ドキドキしているでしょ? もしかすると、相手は遊星さんかな? さっきも3時間ほど、一緒に作業していたようだから。間違っていたら、ごめんなさい」

「恋愛というのが、よく理解できないの。たしかに鼓動は早くなっているけど」

「それって、恋している証拠だよっ! 遊星さんとなれば、十六夜アキという突破不可能なライバルがいるからね。でも、何があるのか分からないのよねぇ。世の中というものは。技術者同士で親しくなり、結ばれていくという線もありえなくもないかも」

 ステファニーが勘違いしたままに、真剣に考えだす。苦虫を噛潰したような表情を、ダルクくんが浮かべている。スプーンで皿底をごりごりとしていた。

「不動遊星は技術者として興味あるけどね」



「ごちそうさまでした。まろやかなで美味しいカレーだったよ」

「ありがとう。マスターにも伝えておくね」

 他のウェイトレスに弄られていたD・ナポレオンを返してもらい、勘定を終える。デュエリストたちが声かけていく。明日もデュエルしようぜ! D・ボードの操作が上手くなったな! ダルクくんが手を振りかえす。置いてある雑誌には決勝戦メンバーが写されている。テレビニュースでは、【光の結社】について放映されいるようだ。ここのところ勢力を広げているらしい。ファラオ勢力は動かないけど、何かの関係があるかもしれない。用心しておかないと。

「ディスクの整備、ありがとう。トレードしていったら、《ジェムナイト・マディラ》と《ジェムナイトマスター・ダイヤ》が手に入ったよ。アウスに渡すね。ボクともデュエルしよう」

「ありがとう、ダルクくん。私も少しずつ覚えてきたから、とても強くなっているよ」

「それは楽しみだね!」

 クリクリー! ダルクくんの肩にハネクリボーが乗りだした。手をつないで、いっしょに帰宅する。とても温かい掌で、冷たい夜風も気にならない。胸が弾んできた。





【エピソードSP3-新たなる脅威・その1】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

No title

クリボー・ジャマーだけどさ、ジャマーとは妨害する意でこれだとクリボー(ダメージを防ぐ)を邪魔する意になってしまう。マジック・ジャマー参照。クリボー・カウンター、またはこの際レベル1コストのワン・オブ・プロテクション(弱者の防御術)でもいい。
【クリボー号】とは少しセンスに欠けるが妙に凝るよりシンプルでいいか。
ボルガ―社・阿久津とかちゃんと設定を引っ張り出してきているあたり関心。
そういえばこの時期は免許とか完全に必要なんだよね。スピードワールド2でオートパイロットが使えなくなったから。

No title

 majesticさん、感想&アドバイスありがとうございます。

 《クリボー・ジャマー》。ネーミングミスをしてしまいました。クリボーを邪魔してはいけませんね。《クリボー・カウンター》の方に変えました。

 いろいろと考えた末に、【クリボー号】に落ちつきました。カタカナでいろいろと考えたのですが、しっくりこなく。ダルクの相棒から単純に取りました。

 ボルガ―社は、クロウのイベントで印象に残っています。さすがに1からD・ホィール製作をする余裕もなく、遊星に手伝ってもらいながら改造している状態です。

 ダルクはボードとホィールの両方を使うかな。異世界人ですので住民票などがない状態。
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