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CROSS-118 アクナディンの最期

遊戯王5D's SOUND DUEL 03遊戯王5D's SOUND DUEL 03
(2011/02/16)
TVサントラ

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 この章も終わりです。

 アクナディンが横たわっている。後頭部を路面に着けないように、ボクが膝枕をしている。闇のライディング・デュエルに敗北したせいか、肉体が黄金粒子となり崩れていく。仮面は外れており、老人顔が露わとなっている。邪気が抜けたかのように、表情が穏やかだ。千年眼が外れており、からっぽな眼窩が痛々しい。つーっと糸状に流血している。

「どうして、私に慈悲をかけようとする? 闇のゲームにより、貴様たちを殺そうとしたのだぞ」

「あなたは、ナイアーラトテップの呪縛から解放された。もう倒すべき敵じゃないんだ。アウスだって無事に戻ってきた。あなたを憎んでも意味はないよ」

 アクナディンの物語を見てしまった。この人も悲しみを背負っているんだ。クリクリー! ハネクリボーがアクナディンを癒している。消えていくにしても、苦しみからは解放したい。

「痛みは取れましたか?」

「痛みなど、数千年前に忘れてしまったよ。千年眼をはめ、我が息子から化物扱いされてからな。ゾーク・ネクロファデスに魂を捧げて、今度はナイアーラトテップどもに操られていた。我が息子が目にすれば、呆れてしまうであろう」

「そうかなぁ? 心配すると思うけど」

「そろそろ、消えゆく時間だ。気をつけるがいい。暗黒のファラオは、近々にゾーク・ネクロファデスを降臨させようとしている。彼自身もナイアーラトテップの洗礼を受けているようだ。あの旧支配者こそが黒幕だろう。お前たちならば、邪神どもを倒せるかもしれないな」

 蝶の群れが飛びたつかのように、黄金粒子が霧散した。ボクにかかっていた重さが消えた。慈悲深い表情こそが、彼本来の顔なんだろう。最期に握ってくれた右手が温かかった。清澄な夜空が広がっている。振りかえると、遊星さんが優しく見守ってくれていた。



「ミレニアム・アイ、ゲットぉぉぉ」

 すぅっと伸びおろされた手首が、街灯に照らしだされた。転がっている千年眼を、バクラが拾いあげた。ハンカチで血を拭っている。悪鬼のような双眸で笑っている。

「偽物とはいえ上出来な代物だ。こいつは俺様が貰っておくぜ。安心しな。貴様らに挑むつもりはないからよぉ。しばらく静観するつもりだ。ナイアーラトテップどもは信用できないからな。ファラオの神殿は、あいつらの巣窟となっていやがる」

 それだけ告げると、バクラは闇の飲みこまれていった。遊星さんと視線を交わしあう。このRPGは最終決戦を迎えようとしている。ゾーク・ネクロファデスが降臨して、ニューヨークでの悲劇が再現されようとしている。倒すべきは、黒衣の旧支配者たちか。さらなる苦戦を強いられそうだ。考えこんでいると、触手塗れの大蜘蛛が近づいてきた。ガサガサとした足音が生々しい。敵かと構えこんだけど、アトラク=ナクアの分身みたいだ。



 クリボー号を飛ばして、病院へと向かっている。アウスが意識を取りもどしたようだ。蜘蛛糸で地図を描いてまで、アトラク=ナクアが説明をしてくれた。遊星さんはジャック&クロウと落ちあって、今後について話しあうようだ。最終決戦はシグナーの結束が頼りだろう。

 駐車場にD・ホィールを止めて、病院に駆けこんだ。面会時間が終了していた以前に、ボクの格好に事務員さんが驚いていた。セフィロン戦でボロボロにされたからね。アウスに逢いたいと懇願すると、ブラウンヘアーの少年が早歩きしてきた。冒険衣装に身を包みこんでおり、10代半ばに見える。場所を弁えて、蜘蛛怪人から人間態になっているのか。

「来たか。来たか。アウス・ピースリーの場所まで案内するぜ」

 中性的で、快活そうな表情をしている。こっちの姿でいればよかったのに。許可を貰って、エレベーターに乗りこむ。廊下は明るく、患者や看護士もうろついている。クリボー号に収めておいたローブを羽織っておいた。ドアを開けると、アウスがママに抱擁されていた。

「ラヴィニア・ピースリーだったよな? 魂を回復させる能力があるというから、連れてきたんだよ。彼女のおかげで、アウスは病院食も平らげたようだ。明日には退院できるぜ」

「嬉しいけど、人質の件は大丈夫かな? 俺たちに接触しない方が」

「そういう会話を料亭でしていたよな? 分身を放って聞かせてもらった。この世界に戻る前に、あんたがいた世界に寄っておいたよ。孤児院の子供たちが監禁されていたから、助けだしておいた。ジョゼフ・カーウィンの手下もボコって、ダチに頼んで護衛してもらったぜ!」

「ありがとう。あれっ、ダチ?」

「ここまで、やりまくったんだ。俺との真剣デュエルを忘れるなよ。リベンジするために、デッキも練りまくった。あんたとの再戦が楽しみで、わくわくが止まらないんだよ。精霊たちもテンション高いんだぜ。それじゃあ、俺は去るとするか」

 アウスがボクに気づいたようで、じっと双瞳を向けている。ママが話しかけてこようとしたけど、アトラク=ナクアに右手をつかまれた。そのまま、ドアまで引張られていく。こう表現するのも変だけど、どことなく兄妹みたいだ。当然に、ママは抗議をしだす。

「ちょっと、何するのヨ? ダルクと話したいんだけど……」

「会話なら後でもいいだろう? こういう雰囲気では、姑さんは邪魔なんだよ。アイスクリームでも、チョコレートでも買ってやるから、一緒に来てくれや」

「子供扱いするなクモオトコ!」

 ぷぅと膨れているママは可愛らしかった。お礼を届けおわると、ドアが静かに閉じられた。アトラク=ナクアがD・ナポレオンまで連れていった。ハネクリボーも消えている。個室のようで、アウスと2人っきりだ。心中は静かすぎるけど、アルマも引っこんでいるのかな? ベッドに近づくと、アウスに抱きしめられた。力強い抱擁ができるようで、安心できるね。



 アウスとの疾走決闘にて、彼女の想いを読んでしまった。それが裏目に出てしまう。胸が熱くて仕方がない。視線を合わせられなく、アウスも同じようだ。無言のままに、時間だけが経過していく。アウスが嗚咽しだしたので、安心させるように頭を撫でた。

「服がボロボロになっている。闇のデュエルをしてきたの?」

「いろいろあってね。心配しないで。こうして、君の居場所にまで戻ってこれたから」

「あなたが無理をするのは辛すぎる」

「ごめんなさい。それでも、逃げたくないときもあるんだ。誰かが苦しめられているのを無視できない。これからも、戦いは続いていく。でもね。絶対に帰ってくるよ」

「絶対だよ。いつも隣にいて見張っておくから」

 心臓が早歩きから駆足となってくる。互いの鼓動が気持ちよく共鳴しあう。

「2人きりで暮らしていた毎日も楽しかったよ。それだけじゃ足りない。未知なる場所に出かけて、たくさんの人に出会って、世界がどんどん広がっていく。自分自身を大きくしたいんだ。デュエルモンスターズ以外にも挑戦したいことが増えてきたの」

 全身で触れあっているので、温かさがダイレクトに伝わってくる。

「どこに行っても、ずっとついていくからね。ダルクくんは何かに熱中すると、そればかりなの。誰かが管理しないと日常生活もできない」

「よろしくお願いするね。これからも一緒にいてほしい」

 笑顔で頷いてくれた。やりたいことは多いけど、彼女が幸せになれるように手伝いたい。ライトニングに捕まったり、あいつらに洗脳されてしまったりと、アウスは苦難に遭いすぎた。こんなことは繰りかえすもんか。全身全霊をかけて誓おう。胸が破裂してしまいそうだ。世界は広いのに、彼女だけしか視えない。不思議な感覚が燃えあがっていく。



 突然に光柱が煌きだした。少女の輪郭が浮かびあがり、リノリウム床へと着地する。生まれたばかりの身体を光らせている。閉じていた両目を、ぱちりんと開いた。呆然としながら、周囲を見渡している。どこか人形ぽい黒髪少女だ。アウスが紅潮したままに呟きだした。

「あれっ? ダルクくんが2人? いや、アルマなの?」

「そうみたいだね。でも、どうして? アルマはボクに取りこまれているはずなのに……」

 アルマも吃驚しているようで、きょとんと視線を放っている。悲鳴を漏らしながら、首を傾げこんでいる。思いだす。ママが教えてくれた情報が、脳裏に再現されていく。



『中途半端に希望を抱かせるのも辛そうだけど、教えておくワ。ナイ神父から聞いたことだけど、アルマの肉体は無くなっていないの。消化されずに、ヨグ・ソトースの仔に内蔵されている亜空間に置かれているそうヨ。もしかしたらだけど……』





【エピソード6-古代神官の宴・FINAL】




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

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