スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

間章1-バリアンの企み

遊☆戯☆王5D's ヴォーカルベスト遊☆戯☆王5D's ヴォーカルベスト
(2012/09/19)
TVサントラ

商品詳細を見る

 今回、デュエルシーンは無いです。微妙に書き直しました。

「マスター。ミルクセーキ」

 クリーム色の液体が、ワイングラスに注がれた。氷が薄黄色に染められて、微かに浮きあがる。氷同士のぶつかる音が、ヴァイオリンの音色へと吸いこまれていく。アヴェマリアと聞いていたが、音楽に関しては詳しくない。心が穏やかになるのは確かだ。アリトはグラスを傾けた。

「理由は分かりませんが、この曲に心惹かれてしまいます」

 キャンサーがヴァイオリンを下げた。ヴァルゴが拍手を称えると、キャンサーがナチュラルに笑みを返す。友人から褒められて、いかにも嬉しそうだ。白衣姿での演奏と風変りだが、青髪が映えて美しい。アリトの隣席では、アンタレスが茫然としている。人間に敗北したショックは、微塵も落ちていないようだ。マリアの祈りすらも、彼女を元気づけるには至らない。

「人間にも、天城カイトのごとき強者がいるの。敗北をしても、恥ではないわよ」

「ヴァルゴの言う通りだよ。気にしすぎたら、駄目だって」

 ティーカップを静かに置いてから、ヴァルゴが慰めかけた。キャンサーも追従する。アンタレスは自信家であり、同胞相手にも連戦連勝を続けていた。敗北への耐性は心許ないものだ。ヴァルゴが困った表情を浮かべると、キャンサーが頷きを投げかけた。私が何とかするよと、表情で語っているようだ。言葉を介さずに会話可能とは、つきあいが長いゆえか。

「アンタレスぅー。どうしたの? いつもは偉そうにしているのに、ちょーっと負けたぐらいで黙りこんじゃうの? 友達として情けないよー」

 背後から覆いかぶさるように、キャンサーが抱きしめた。ポニーテールを、右手で撫でまわす。からかいながらも、彼女なりの愛情を示している。ヴァルゴもチーズケーキを差しだした。アンタレスは首を振って、遠慮を示すのみ。キャンサーがケーキを摘まむと、ヴァルゴが膨れだした。アンタレスの口元が笑んでいる。テンションは落ちこんでいるが、安堵が戻っているようだ。

「気持ちは分かるが、そっとしてやりな。考えこむ時間も必要なんだよ」

 アリトの言葉に、2人ともカウンター席に座りこんだ。ヴァルゴとアンタレスに、キャンサー。皆、12歳ぐらいの少女姿をしている。カウンターテーブルには、奇妙な暗黒生物も座りこんでいた。真紅の瞳を、薄闇の中で光らせている。大きな尻尾をユラユラさせながら、バリアンの会話に聞き耳を立てていた。ヴァルゴが何となく、頭を撫でてやる。



「旧支配者と名乗る存在が、ヌメロンコードを探し当てました。バリアンが総力を挙げても見つけられなかったのに……。クトゥグアがヌメロンコードを奪おうとするも、アストラルが邪魔をしたようです。ヌメロンコードを13枚のグランド・ナンバーズに分割して、異世界へ飛ばしました。それらの行方は判明しています。遊城十代が活躍した世界だと……」

「デュエル・モンスターズを核とした世界群は、たった1枚のカードから創造された。ダークネス曰く、そういうことらしい。旧支配者が外世界へ脱出するためには、かなり有用なプログラムらしいよ。ヌメロンコードは。ボクも細かい原理は知らないけれどね」

 キャンサーの説明に、ウルタールが継ぎ足す。

「バリアンワールドは終焉を迎えようとしています。滅びを止めようと、ドルべ様は苦心をされました。人間を利用してナンバーズを収集したり、オーバー・ハンドレッド・ナンバーズを創造したりと。全ては上手く運ばずに、ヌメロンコードに賭けるしか残されていません。遊城十代の世界へ、ギラグ様は軍勢を派遣しました。旧支配者とのナンバーズ争奪戦が継続中です」

「グランド・ナンバーズの収集は完遂するとは限りません。幸いにして、そのデータを得られました。バリアン科学を集結して、疑似グランド・ナンバーズを造りあげるのです。その為には、人間たちの闇が必要となります。ドン・サウザンドの欠片を、人間どもに感染させて、闇を増殖させるのです。ハートランド・シティで実行させたかったのですが……」

「旧支配者クトゥルフが暴走しましたね。あの世界の人間は、99%以上が石に変えられたわ。癇癪を起したからって、余計なことをしてくれます」

 ヴァルゴが溜息を吐いた。

「この世界は人口も十分だけでなく、永久機関フォーチュンが開発されています。不動遊星が、飛躍的に技術革新を進めたようですね。海馬コーポレーションの中央装置を使えば、我々の計画も捗ることは間違いないでしょう。グランド・ナンバーズの創造には、エネルギーが相当量に必要となりますから。ドン・サウザンド・シードを植えつけて、憎悪と絶望で満たしましょう」

「デュエルの敗者に、シードを埋めこみます! 感染者は闇の決闘者となり、他の人間に挑んでいきます! 感染者に敗北したデュエリストも暗黒色に染まり、ドン・サウザンドの意思を拡大させようとします。ネズミ算式に感染者は増えて、この世界は短期間で闇一色となるでしょう!」

 アリトが氷を噛みしめた。ウルタールの黒猫は、少しも表情を動かさない。ヌイグルミっぽい愛らしさを魅せてはいるが、どこか不気味だ。

「旧支配者の移動先を追って、遊城十代の世界へは行けました。バリアン科学の賜物です。こちらの世界まで来れたのは、ウルタールのおかげだね。旧支配者側の存在が、どうして私たちを助けてくれるの? 何か企んでいるんじゃない?」

「グランド・ナンバーズの製造計画は、ボクたちにとっても都合が良いからね。資源が増えれば、争う必要も無くなる。クトゥグアとは違い、ボクは期待をしているんだ。君たちに賭けてみたい」

 ナイアーラトテップの一員という、ウルタールの黒猫。こいつは、どうも信用できない。警戒だけは怠ってはいけない。両耳から伸びているのは、腕なのか触手なのか? それよりも、今はアンタレスだ。自信を割られたからこそ、成長のチャンスがある。

「マスター。カツ丼」

 振り向いてきたアンタレスに、アリトはどんぶりを突きつけた。

「アンタレス! これを食って、今度は勝つんだ!」



 アリトはアンタレスを誘って、農村道を歩いていた。田園地帯を通りすぎると、深々とした森林が近づいてくる。緑が繁茂しているせいか、空気に清涼感があふれている。

「あんたら、ハイキングをするのか? 山奥には熊が出るから、気をつけろよ」

「夕方まで一仕事があるんだ。急ごうぜ、太郎」

「遅れてしまうと、親父たちに叱られるよな。甚兵衛も吉蔵も走ろうか?」

 若者3人が通りすぎていく。土汚れたジャージ姿だけど、精悍で爽やかだ。陽光の届きにくい森林奥に突入すると、アリト一行は修行を始めた。

「アンタレス。お前の弱点は相手を見ないことにある。人間相手だと見下して、舐めた状態でプレイしていたんだろ? デュエルはコミュニケーションに尽きる。どんな相手だろうと、敬意を抱いて戦わないとな。リスペクト精神が無ければ、勝利を掴めない」

 アリトは上半身裸となり、兎跳びを進ませている。アンタレスは体操服姿で追っていく。

「リスペクト精神が大切か……。たしかに、私は油断していたかもな。ドロー! ドロー!」

 瀑布のように川水が落ちていく。右手を突っこませるだけで、簡単に折られてしまいそうだ。滝を利用してのドロー練習はハードなものがある。それだけでは、メニューの半分もいかない。木々を跳び渡りながら、ドローを繰り返していく。右腕だけで岩塊を持ちあげながら、ドローを叫ぶ。このような訓練をしているからこそ、七皇は強靭さを保っているのだ。

「でも、人間を狩るのですね?」

「俺も気が乗らないよ。クロウにシードを植えこむチャンスがあったけど、逃してしまった。キャンサーにも叱られた。ドルべさんは人間を見下して、アストラルワールドを滅ぼそうとしている。デュエリスト同士は仲良くしたいんだけどな。そういう訳にもいかないか……」

 話に夢中となり、油断してしまったようだ。茂みが爆発して、巨熊が噛みつこうと迫出してきた。アンタレスは怯まない。体毛に覆われた肉体下に、自らの背中を潜りこませた。右腕を胴体に回しこんで、超重量を抱えあげる。相手の勢いを利用するかのように、地面へと叩きつけた。大熊は全身を打ち据えられて、気絶を余儀なくされた。

「熊を一頭伏せて、ターンエンド!」

 アンタレスの表情から悲壮感が消えている。失った矜持は、芽を伸ばそうとしている。アリトは赤髪に手を置いた。傷つきやすいけど、回復も成長も早いもんだ。まったく、これだから子供は最高だぜっ! アリトは心内で叫んでいた。



 一息を吐いた瞬間、夕空が震えだした。異世界の壁を乗り越えて、何者かが突入してくる。光玉が次々と、アリトたちの目前へと降りてきた。畏怖に浸食されてか、動物たちが泡を食ったように逃げていく。黄金色に輝いている人型が、2人を見下ろす。

「ミザエルさん。あんたまで、この世界に来たのか?」

 アリトが敬礼をした。アンタレスは緊張しきって、すっかりと膝を着いている。七皇でも桁違いの存在だ。決闘神の周囲には、バリアン精鋭部隊も従っている。それだけでなく、闇の塊が浮かびあがっている。漆黒に染まったアストラルといった風貌だろうか。

「ついに、完成したのか。ダーク・アストラルが……」

 ミザエルが遠くを見据えている。静かに呟きだした。

「ベクターの報告によれば、不動遊星が最強の決闘者であるそうだな。実に興味深いことだ。我がドラゴン・デッキで葬ってくれよう」





【TF-その46へ続く】





「ヌメコンコードの生成は、クトゥグアも失敗している。死霊ごときがグランド・ナンバーズを製造するって? そんなの不可能に決まっているじゃないか。遊城十代や九十九遊馬、そしてヴルトゥーム・ウェイトリィも旧支配者と敵対している。あの世界に不動遊星たちが呼ばれる可能性も小さくない。そうなると、少しばかり厄介だ。バリアン七皇の実力があれば、シグナーも全滅させられるだろう。潰しあってくれると助かるよ」

 三日月が夜空を飾っている。高層ビルの屋上で、ウルタールが街全体を眺めていた。ダークカラーのボディが夜闇に溶けこんでいる。赤い双眸だけが、ぼんやりと浮いているようだ。

「幾多の平行世界を観察したけど、あのバリアンワールドは特別だね。異常なほどに、大規模なんだ。異世界からも死者の魂を呼びこむから、100億ものバリアンが存在している。すっかりと記憶を失っているが、ボクの知りあいもいるようだ」

 何者かが、ウルタールの背中を見下ろしている。

「バリアン七皇は強いとはいえ、シグナーとの戦いにより疲弊するだろう。そこを狙って、闇のデュエルを挑むのはどうだい? 精霊獣ディアバウンドの良質な餌になると思うよ。キグナスとかも、この世界に連れてきたけどね。まずは、そいつから狙いなよ」

「獏良了」

 ウルタールが振り返った。その表情は依然として固定したままだ。這い寄る混沌が、ネオドミノに浸食している。




テーマ : 遊★戯★王 - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

カオスナンバーズ69と92はOCG化されましたね。

キャンサーとヴァルゴの人間関係といいますか・・・。
よく読み取れないのですが・・・どういった感じなんでしょう?

ミザエルはもうチートレベルと理解していいんですか?

今後の活躍が気になります・・・。

No title

 TMさん、感想ありがとうございます。イベントに関連したモンスターは、高確率でOCG化されますね。

 ミザエルのデュエル案はできています。怖いぐらいに活躍します。後のアリトもそうですけど、デッキもアニメと変わってきます。

 ヴァルゴとキャンサーの絡みは、あまり書いていませんね。読み直して、微妙に追加してみます。キャンサーは後で活躍していくかな。水属性のテーマデッキで。

キャンサーとアンタレスの容姿と性格が詳しく知りたいです・・・。

それにしても今回はバリアンのやっていることの中身を説明したネタ会ですかね?
ドローの練習、熊を一頭伏せる、アリトのロリコン(ショタコン?)発言・・・。
面白かったです(笑)
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。